研究課題/領域番号 |
16H04210
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉山 和正 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40196762)
|
研究分担者 |
有馬 寛 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60535665)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | amorphous alloy / short range ordering / medium range ordering / RDF / anomalous scattering / reverse Monte Calro |
研究実績の概要 |
本研究は,研究代表者らが自ら開発したAXS-ND-RMC法を駆使して非晶質合金に存在する結合性の強い化学的短距離秩序構造および局所的密度揺らぎ(バーナル空隙)を特定し,その協奏から形成される中距離秩序構造の詳細を原子レベルで解明することを目的とする.そして最終目標として,明瞭なMROが観察できない非晶質合金の構造解析結果と比較検討することによって,非晶質合金のMROが材料特性に与える影響を原子レベルで解明したいと考えている. 平成28年度は,回折パターンにプレピークシグナルを示す非晶質合金の構造解析を実施した.たとえば,Zr-Pt系非晶質合金の構造解析では,プレピークシグナルはPt-Pt中距離領域構造がその要因であることを明確にすることができた.そしてその中距離領域構造は,Zrに富みバーナル多面体を基本構造とする充填密度の高い中距離領域構造と比較的Ptに富む非バーナル多面体を基本とする充填密度の低い中距離領域構造の協奏によって構成されていることも判明した.このような特殊構造は,構成元素のランダム配列では説明できず,中距離領域構造はこれまでの結合性の強い局所構造単位の連結からなるという単純なモデルでは説明できないことを議論することができた.さらに,Zr-Pt-TM(遷移元素)3元系非晶質合金の解析では,構造関数の組成依存性からプレピークが重元素Pt-Ptの中距離相関から成り立っていることを明らかとすることができた.しかし,本系は6種類の部分構造の総和として評価する必要があり,現時点では,前述のZr-Pt系で得られたような詳細な中距離領域構造の協奏を実証することはできていないない.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標としたプレピークシグナルと原子配列の相関を明瞭にすることができた.そして,2元系Zr-Pt非晶質合金の場合は,プレピークシグナルはこれまで考えられていたような結合性の強い局所構造単位の連結というメカニズムではなく,局所的元素および密度揺らぎを伴う中距離領域構造の発達という明瞭かつ詳細な原子はいれとモデルを提案することができたので,おおむね順調に目標を達成できたと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は,結合性の強い局所構造単位の相関が原因で形成されていると考えられるプレピークの発現メカニズムを解明することが一つの目標である.平成28年度の研究によって,Zr-Pt系非晶質合金のプレピークの発現メカニズムは,結合性の強い局所構造単位と密度および組成揺らぎを伴う連結がその正体であることを突き止めた.今後は,これまでの予備実験でプレピークシグナルが観測されMROの存在が明瞭であるAl50-70Zr-NiおよびAl50-70Zr-Cu非晶質合金の構造解析を通じて,様々な非晶質合金系でプレピークの発現メカニズムを解明したい.さらに,本研究のもう一つの目標点としてのプレピークシグナルを示さない重原子と軽元素の組み合わせの2元系非晶質合金(Zr-Co系,Nb-Ni系)の構造解析を通じて,非晶質合金のMROが材料特性に与える影響を原子レベルで解明していく計画である.
|