研究課題/領域番号 |
16H04216
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福塚 友和 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90332965)
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研究分担者 |
西 直哉 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10372567)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 次世代蓄電池 / 電解液 / 界面 / 溶媒和構造 |
研究実績の概要 |
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LITFSA)を1 mol dm-3となるように炭酸プロピレン(PC)に溶解した有機電解液にカルシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Ca(TFSA)2)あるいはマグネシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Mg(TFSA)2)を加えた有機電解液を調製した。リチウムイオンに対してカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンを0.9、1.0、1.1となるようにCa(TFSA)2あるいはMg(TFSA)2を加えた。その結果、イオン伝導度は添加前と比べて、減少した。この要因は活性化エネルギーと粘度の増大によるものであった。また、イオン液体電解液/金属電極界面でのイオン液体の構造について分光学的手法による検討を始めた。 LiTFSA/PCにCa(TFSA)2を添加した場合、Ca2+/Li=1.1が黒鉛への電気化学的リチウムイオン挿入脱離反応が進行する閾値であったが、Mg(TFSA)2を加えた場合はこの閾値が0.9であった。すなわち、Ca2+とMg2+ではリチウムイオン挿入脱離反応に及ぼす影響が異なることが明らかとなった。上記で述べたように電解液の物性としては大きな差がなかったことから、電極/電解液界面の構造の違いが影響していると考えている。この違いは黒鉛負極に形成されるSolid Electrolyte Interphase (SEI)と呼ばれる表面被膜の形成過程に影響を与えることをその場原子間力顕微鏡による観察から明らかにした。 黒鉛合剤電極内における溶媒和リチウムイオンの構造をその場ラマン分光測定により測定し、リチウムイオン挿入反応時に合剤内部の電解液の構造が電解液バルクと異なることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画にしたがって、高イオン強度電解液の物性評価と黒鉛電極における電気化学反応を調べている。特に有機電解液系では種々の知見が得られており、着実に研究が進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究実施計画にしたがって、有機電解液系とイオン液体電解液系に関する研究を継続するとともに、分光学的手法による界面構造解析を進める。特にその場ラマン分光法を用いた合剤電極内の電極/電解液界面での溶媒和構造の変化を捉えることが可能となってきており、本手法を高イオン強度電解液に積極的に適用する。また、電極/電解質界面における電気二重層構造の界面分光学による解析を継続する。また、リチウムイオン以外の多価金属イオンをキャリアとする二次電池系への高イオン強度電解液の適用を検討する。
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