研究課題/領域番号 |
16H04217
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村井 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (20378805)
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研究分担者 |
中西 貴之 北海道大学, 工学研究院, 助教 (30609855)
徳留 靖明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50613296)
石井 智 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (80704725)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズモニックアレイ / 蛍光体 |
研究実績の概要 |
金属ナノ粒子の周期アレイ構造(プラズモニックアレイ)に励起される協同プラズモニックモードの理解を深め、新規光学特性を開拓することを目的とする。協同プラズモニックモードは、個々のナノ粒子に励起される表面プラズモン(光と結合した自由電子の協同振動)がアレイ面内への光回折により協同的に振動するモードであり、金属の光損失を避けつつ面内に光を強力に閉じ込めることができる。申請者らはこのモードを発光体と組み合わせ、60倍の発光強度の増強に成功した。電場増強効果が及ぶ空間範囲を拡げる成果は、応用を見据えると非常に大事で、金属の損失により限定的であった増強効果を高め、多くの光量や電子-正孔対を必要とする用途にも使える可能性が出てきた。本申請では、発光増強の機構を明らかにするとともに、協同プラズモニックモードを種々の光学過程と共鳴させることで、従来に比べ桁違いの増強効果を引き出すことを目標にする.H28年度の研究で以下の成果を得た。 (A)[発光増強]1.Alナノシリンダーアレイの高さによって発光増強を制御することに成功した。2.新崎亮であるTiNからナノシリンダーアレイを作製し色素層からの発光増強を実現した。 (B)[センシング]1.ナノ粒子アレイ上にラビング処理を施し、一軸配向したメソポーラスシリカ薄膜を堆積した。メソポーラスシリカ薄膜のメソ孔内の状態によって協同プラズモニックモードの共鳴波長を制御した。 (C)[表面増強Raman散乱]メソポーラスシリカ薄膜に金を斜め蒸着することで金メソグレーティング構造を作製した。構造のSERS特性を明らかにした また、昨年度繰越申請した助成金を計画に従い執行し、論文にまとめた(投稿中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した3つの研究事項([発光増強]、[センシング]、[表面増強Raman散乱])において研究通りの結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
以下の4項目について研究を行う (A)[発光増強]前年度の研究により、アレイの上に強発光性希土類錯体薄膜を成膜し、赤色自然放出発光の大幅な増強を達成した。今年度は、自然放出ではなく、誘導放出の増強を試みる。そのために、アレイ上にレーザー色素を含有するポリマー薄膜を成膜する。自作の回転ステージと分光器を組み合わせた光学系により、発光の放出角度依存性を調べるとともに、発光の励起光強度依存性を調べる。 (B)[センシング]ナノ粒子アレイ上にラビング処理を施し、一軸配向したメソポーラスシリカ薄膜を堆積する。前年度までの研究で、水中でのメソポーラスシリカ薄膜を製膜したアレイの透過率のその場観察を行うことができた。今年度は、水に種々の溶質を溶かした時の屈折率のセンシング能力を調べる。 (C)[アップコンバージョン]金属ナノ粒子アレイ上にアップコンバージョン(UC)を示す酸化物ナノ結晶を塗布し、アレイによるUC増強を試みる。UCを示す酸化物ナノ結晶としてはEr-Yb共ドープ系を第一候補とする。Er-Yb共ドープ系はYbからErへのエネルギー移動が高効率で起こる一方、Ybの光吸収が小さい。アレイによって980nmの吸収効率を高め、大幅なUC光強度の増強を試みる。また、UC光をアレイによって特定方向に集中させることも併せて試みる。 (D)[温度センシング]発光時の蛍光体の加熱は、温度消光につながる重大な問題である。このサブテーマでは、温度マネジメントの一歩として、協同プラズモニックモード励起に伴う金属ナノ粒子アレイの温度上昇を調べる。そのため、発光中心として、研究分担者である中西貴之助教が合成した温度により発光色が変化する錯体(カメレオン錯体)を用い、アレイ上に製膜する。励起光とともに協同プラズモニックモード励起用の第2のレーザーを入射し、第2のレーザーの入射角度・強度による発光色の変化から温度変化を調べる。
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備考 |
H28年度日本セラミックス協会倉田元治賞
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