研究課題/領域番号 |
16H04218
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐野 庸治 広島大学, 工学研究科, 教授 (80251974)
|
研究分担者 |
定金 正洋 広島大学, 工学研究科, 准教授 (10342792)
津野地 直 広島大学, 工学研究科, 助教 (40758166)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ゼオライト / 水熱転換 / 有機構造規定剤 / ホスホニウムカチオン |
研究実績の概要 |
工業用触媒、吸着・分離剤等として工業的に幅広く用いられている無機多孔体の一種であるゼオライトは、未だに詳細な結晶化メカニズムが解明されていない。そのため現在も新規構造を有するゼオライトの合成は場当たり的な試行錯誤によって行われており、ゼオライトを自在に設計し合成できるレベルには達していない。最近、本申請者らは既存の容易に入手できるゼオライトを出発原料に用いることで、通常ゼオライト合成に用いられているアモルファス原料よりも速く高純度で目的のゼオライトが得られることを見出した(ゼオライト水熱転換法)。本申請では出発ゼオライトの分解によって生成した構造ユニット(ナノパーツ)の構造解析を行うとともに、2種類の有機構造規定剤を用いてそれらナノパーツの自由な組み合わせによる高性能・高耐久性の機能性材料ゼオライトの自在設計・合成法の確立を目指す。本年度は、昨年度に引き続き1種類の有機構造規定剤(アンモニウムカチオンあるいはホスホニウムカチオン)を単独に用いてゼオライト水熱転換を行った。また、リン修飾による高耐久性ゼオライトの合成の観点から、アンモニウムカチオンとホスホニウムカチオンの2種類の構造規定剤を同時に用いてゼオライト水熱転換も開始した。その結果、Post-synthesis法により調製したヘテロ金属導入FAUゼオライト([Al, M]-FAU)を出発原料としたゼオライト水熱転換により、高結晶性のヘテロ金属導入 CHAゼオライト([Al, M]-CHA, M=Fe, Ga, Sn)の合成に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼオライトの物理化学的性質は骨格内に存在するAlの分布およびその量に大きく依存する。そのため物性制御の観点から、Al以外の金属(Ti, Fe, Ga etc)のゼオライト骨格内への導入(同型置換)が試みられており、特異的な酸性質や酸化・還元特性を発現させることが可能である。本年度は、CHAゼオライト骨格へのFe, GaおよびSnの導入を試み、そのNH3-SCR活性の調査を行った。UV-visおよび71Ga MAS NMR測定により4配位金属種に帰属されるピークが検出され、ヘテロ金属がゼオライト骨格内に導入されていることを確認した。また、得られた ヘテロ金属導入CHAゼオライト([Al, M]-CHA)にCuイオンを含浸担持し、NH3-SCR活性を調査した。いずれの触媒も水蒸気処理を行わない場合、NO転化率は200 ℃で85 %以上の高い活性を示した。一方、900℃で4時間水蒸気処理後のCu担持触媒のNO転化率は、[Al, Ga]-CHAでは40 %程度まで低下したが、[Al, Fe]-CHAおよび[Al]-CHAでは70 %以上の値を示した。また、[Al, Sn]-CHAの200℃におけるNO転化率は80 %以上であり、Snの導入によりCHAゼオライトの触媒耐久性が向上したことが明らかとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
従来のゼオライト合成ではアモルファス原料を用いており、まずナノパーツを時間をかけて形成する必要がある。そのため得られるゼオライトの相選択性は有機構造規定剤や合成温度、アルカリ濃度などの合成条件に著しく依存した。しかし、ゼオライト水熱転換法によるゼオライト合成では、出発ゼオライトからある程度構造規則性を有するナノパーツが得られるため、得られるゼオライトの相選択性はそれほど合成条件には依存しないと思われる。さらに、化学構造の明らかとなったナノパーツを用いれば、得られるゼオライトの結晶構造はある程度類推できる。そこで今後は、アンモニウムカチオンとホスホニウムカチオンの2種類の有機構造規定剤(N-SDAおよびP-SDA)を用いて様々なナノパーツを調製し、その組み合わせによるゼオライト合成について検討する。構造規定剤以外にも様々な結晶構造を有するゼオライトを出発原料に利用することができるため、新規ゼオライトの自在設計・合成も可能と考えている。
|