研究課題/領域番号 |
16H04220
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山田 幾也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378880)
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研究分担者 |
阿部 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (60354156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 異常高原子価イオン / 超高圧合成 / 構造・活性の相関 / 第一原理計算 / 四重ペロブスカイト酸化物 / 酸素発生反応 / 酸素還元反応 |
研究実績の概要 |
本研究では超高圧合成法(10万気圧以上・千℃程度の超高圧・高温条件での物質合成法)を用いて得られる異常高原子価イオン(Fe4+など)を含有する遷移金属酸化物を主要なターゲットとした触媒メカニズムの解明と新しい触媒機能の開拓を目標としている。主要な実績は以下の3点である。 (1) 前年度に論文発表した四重ペロブスカイト型マンガン酸化物AMn7O12 (A = Ca, La)の酸素発生・還元二機能性触媒について、第一原理電子状態計算に基づきメカニズムの検討を行った。スラブモデルを用いて表面吸着状態を詳しく調べたところ、四重ペロブスカイト酸化物表面において配位不飽和・配位飽和の2サイトにブリッジ吸着するモデルが存在することが分かった。酸素発生理論過電圧も単純ペロブスカイト酸化物と比較して有意に小さくなっており、四重ペロブスカイト酸化物の構造に由来した酸素発生触媒活性の向上について理解できた。 (2) Bサイトイオンの種類が異なる一連の四重ペロブスカイト酸化物と単純ペロブスカイト酸化物に対して、酸素発生・還元触媒活性の系統的な比較を実施した。酸素発生触媒活性については四重ペロブスカイト酸化物で一様に向上が見られた一方、酸素還元触媒活性についてはほとんど変化しなかった。バルク電子状態計算に基づく検証を合わせて実施し、電荷移動エネルギーによって活性の変化・差を説明できることが分かった。 (3) 電子状態と酸素発生触媒活性との相関を明らかにするため、単純ペロブスカイト酸化物を対象に系統的な試料合成と評価を行った。Fe, Coなどの周期表の右側の3d遷移金属元素では、触媒活性に対して大きな価数依存性が観測された一方、周期表の左側の元素については明確な価数依存性は観測されなかった。今後、第一原理計算を用いて理論的な検証を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四重ペロブスカイトにおける酸素発生触媒活性の向上について、実験・理論の両面から理解が進んだ。四重・単純ペロブスカイトを対象とした系統的な実験とバルク電子状態計算により、酸素発生触媒活性の向上がBサイト元素によらず一様に起こることが分かった。表面電子状態計算により、新しい触媒作用メカニズムが明らかとなった。これらの成果は、発見間もない四重ペロブスカイト酸化物触媒の学理を大きく進展させた。一方でメタン反応触媒については、実験条件の最適化に困難が生じ、定量的なデータに基づく議論には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに順調な成果が出ている電気化学反応触媒を主な研究対象として集中的に研究を実施する。特に理論計算との連携に基づき、材料探索・性能評価だけではなく、普遍的な学理の構築へ向けた取り組みを実施する。
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