研究課題/領域番号 |
16H04223
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西原 禎文 広島大学, 理学研究科, 准教授 (00405341)
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研究分担者 |
戸川 欣彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415241)
帯刀 陽子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30435763)
久保田 佳基 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50254371)
綱島 亮 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (70466431)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 単分子誘電体 / ポリオキソメタレート / 強誘電 / 常誘電 / 誘電率 / 分子エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究では,単一分子で強誘電体的な振る舞いを示す「単分子誘電体」を取り上げ,その物質群の拡張と,高度デバイス化を視野に入れた物性解明及び機能創出を目指す.我々はこれまでに,単一分であたかも強誘電体の様な分極履歴を示す究極の微小誘電体「単分子誘電体」の開発に成功している.そこで本研究では,「単分子誘電体」の①誘電性能の向上と物質群の拡張,②物性解明,③機能開拓を行うとともに,④高度デバイス化を達成し,「単分子誘電体」に関する一連の広範な学理を形成する. 【本年度の実施計画と成果】 初年度は,「単分子誘電体」のデバイス化を見据え,誘電性能の向上を目指した.強誘電体における性能とは,主に分極履歴の発現温度と自発分極の大きさを指すが,本系では既に室温での分極履歴の発現に成功している.そこで,以下の計画に沿って,自発分極の飛躍的な向上を目指した. ・本研究で扱うPOM分子は,多段階の安定還元状態をとることが知られている.還元により注入された電子は,内包された金属イオンの動きに対して逆方向に動くことが示唆される為,還元数に応じた自発分極の増大が期待できる.実際,これまでに達成されていない[Ag⊂POM]の還元に成功したため,今後,この物質を用いた物性測定を行う予定である.尚,本成果は既に論文として発表した. ・一方,時間分解可能な構造物性評価によって強誘電性発現の機序を解明するとともに,「単分子誘電体」の物性発現に必要な構造モデルを作成することを目標としていた.この測定には室温で安定な[Tb⊂POM]の作製が必須となり,本年度内にこの物質開発に成功した.現在は,時間分解可能な高輝度X線構造解析に向けて共同研究者と打合せを行っている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,「単分子誘電体」のデバイス化を見据え,誘電性能の向上を一つの目標と定めた.この目標に対し,これまでに達成されていない[Ag⊂POM]の電子状態制御に成功したため,上記の目標を概ね達成し,順調に進展している. また,時間分解可能な構造物性評価によって強誘電性発現の機序を解明するとともに,「単分子誘電体」の物性発現に必要な構造モデルを作成することも本年度の目標と設定した.これに対し,既に共同研究者と時間分解可能な高輝度X線構造解析に向けて打合せを重ねていることから,当初の研究計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は研究計画通りに研究が進んだため,当初の研究計画通り,下記に従って研究を進める. 【物質群の拡張】来年度は,これまでに得られた「単分子誘電体」をベースに,誘電性能の向上を図る.また,新しいタイプの「単分子誘電体」開発を行う. 【物性解明】本段階では,未だ詳細な物性が解明されてない「単分子誘電体」において,時間分解可能な構造物性評価によって強誘電性発現の機序を解明する.具体的には,時間分解可能な高輝度X線構造解析及びローレンツ型透過電子顕微鏡(ローレンツTEM)を用いて,分極形成及び緩和過程を直接観測し,評価する. 【機能創出】「単分子誘電体」は新しい物質群である為,予測を超えた機能出現が期待できる.そこで,本段階では磁場による分極制御,及び単分子磁石で観測される巨視的な量子トンネル現象の出現を探査する.また,磁場による分極制御を試みる. 【高度デバイス化】本研究で開発する「単分子誘電体」は単一分子で記録を保持できることから,従来の常識を覆す超高密度メモリの創出が期待できる.そこで,今後,「単分子誘電体」のメモリ効果を実証し,分子メモリデバイスのプロトタイプ構築を目指す.
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