研究課題/領域番号 |
16H04225
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
駒場 慎一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20302052)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナトリウムイオン電池 / 層状酸化物 / インターカレーション |
研究実績の概要 |
我々はナトリウムイオン電池が,レアメタルフルーかつ毒性元素が不要な次世代二次電池として有望で有り,そのフルセル作動を世界に先駆けて実証し,現在も電極活物質や電解質に適用できる新材料の開発により電池の高性能化を目指した研究を進めている.本研究では4ボルト級の電池作動を目指して,正極活物質の研究を行った. これまでもP2型で結晶化したニッケル・マンガン複合層状酸化物で4ボルト作動を実証してるが,充放電寿命が短いことが問題であった.そこで,寿命を改善するために,ニッケルサイトの一部を銅や亜鉛で置換した.その結果,ナトリウム脱晶入時の結晶構造変化が安定化されて,寿命が改善できることが分かった.この材料の詳細な電気化学特性と構造変化の相関を解明した上で,さらなる材料の最適化を進めている. また,4ボルト以上の高電圧領域では,正極表面の状態,とりわけバインダーが果たす役割が重要であることに着眼した.ナトリウムイオン電池に適用可能な正極材料の多くが耐水性が不十分で,水溶性のバインダーの適用が困難であった.しかし,P2型のニッケル・マンガン層状酸化物が十分な耐水性を有することを突き止めた上で,電極の機械的強度を格段に高めることができる水溶性カルボン酸ポリマーをバインダーとして調査した.その結果,ポリグルタミン酸バインダーがもっとも適したバインダーであることを見出した.3d元素を含む各種ナトリウム・マンガン層状酸化物について引き続き検討を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4ボルト作動の正極材料の開発,さらにバインダーの最適化や各種3d層状酸化物の系統的な固体電気化学的検討が進んでおり,想定を上回る成果を得ており,学術論文としても投稿しているから.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた知見を基に,さらに層状マンガン系酸化物の材料開発を進める.具体的には,2017年度に見出したマンガン・ニッケル系酸化物の異種元素置換について,計算化学的手法を用いて結晶相の安定性とナトリウム脱離時の作動電位のシミュレーションを基に,結晶構造と電気化学特性の相関の調査を進める. 2011年にNature Materials誌に発表したP2型マンガン・鉄系層状酸化物に上記アイデアを拡張し,酸化還元の容量を向上させるために,酸素アニオンのレドックスの発現と,それに伴う電池特性変化を詳細に調べる.すでに事前調査を進めており,一定の成果を見込んでいる.これらの検討は,酸化物バルク構造の調査であるが,それに加えて,水溶性バインダーや電解液添加剤による界面修飾を調査し,さらに研究を最大限かつ効果的に推進する予定である.
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