研究実績の概要 |
セラミックスは,金属材料と比較して耐熱性や耐食性,耐摩耗性といった特性に優れ, 軸受けなどの摺動部材や生体材料としての利用が期待されている.しかし,セラミックスは低破壊靭性であるため,使用時に導入される欠陥を起点として突発的な破壊が生じる危険性がある.このため, 低破壊靭性の克服が実用に向けた課題となっている.これに対して過去の研究では,表面改質手法であるショットピーニング(SP)による圧縮残留応力の導入と,自己き裂治癒による強度回復を併用した,セラミックスの信頼性向上手法が提案されている.しかしながら,SP施工面は表面損傷が著しく,治癒不可能な剥離状欠陥が発生するという問題を有する.そこで本研究では, 基材と物理的接触がないレーザピーニング(LP)という技術に注目した.さらに,LPとき裂治癒との併用により,各種セラミックスの更なる高強度化を目指す. 高強度化の指標となる曲げ強度向上を達成するためには, LPにより基材の表面粗さや残留応力といった表面特性がどのように変化するかを調査する必要がある.その基礎研究として, 本年度はLPの各パラメータが窒化ケイ素の表面粗さや残留応力といった表面特性に及ぼす影響を調査した. 窒化ケイ素/炭化ケイ素複合材を供試材として,パワー密度とカバレージを変化させたLPを施した.その結果,表面粗さの増加と,カバレージが3000%以上の高い条件における表面き裂の発生が見られた.しかし,面取り部にSPのような著しい欠けを発生させることなく,表面に300MPa程度の圧縮残留応力を導入することができた.最適なパワー密度とカバレージを見出すことができた。
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