接合部に非接触で振動を付与し接合することで接合体の強度特性を向上する、金属と樹脂の新しいレーザ異材接合法を開発する。そのため、装置の設計・試作を含む接合法の開発と、接合メカニズムを解明するための局所的な界面強度評価法について検討する。平成30年度に行った主な研究内容を以下にまとめる。 これまでに、パルスレーザを援用したツインレーザビーム照射により接合することで、金属/樹脂異材接合体の強度向上が認められた。そこで、接合メカニズムについて検討するため、接合体の界面強度を評価した。レーザ接合実験により得られた金属/樹脂異材接合体を、界面に直接開口方向のはく離力を与えられるくさび型圧子押込み試験により評価した。界面強度評価試験の結果、提案する試験法により界面ではく離を生じさせることができた。また、界面強度に認められるパルスレーザ照射の有無による差は小さかった。したがって、パルスレーザ照射により接合体の破断荷重が向上した原因は、接合中の界面温度が変化したことが主要因と考えられる。また、このように界面温度が変化することによって、レーザ照射による樹脂の機械的性質の変化が接合体の強度特性に影響を及ぼす可能性も示唆された。そこで、界面強度に及ぼす樹脂の機械的性質の変化について検討した。樹脂を高温および高湿度環境中で保持し、機械的性質の変化を調べた。その結果、高温および高湿度環境中保持により、樹脂の機械的性質が変化し、樹脂によっては、ぜい性的な破壊挙動へと変化する場合が認められた。高温および高湿度環境中保持によって機械的性質が変化した樹脂と金属の接着接合体を作製し、界面強度をくさび型圧子押込み試験により評価した。圧子押込み試験中の押込み荷重とき裂長さの関係を求め、き裂進展抵抗により界面強度を評価した結果より、樹脂の機械的性質の変化が界面強度に影響を及ぼすと考えられる。
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