研究課題/領域番号 |
16H04233
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森田 康之 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (90380534)
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研究分担者 |
水谷 武臣 北海学園大学, 工学部, 准教授 (40451405)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん細胞 / 転移 / 浸潤 / 力学場 / 間葉系幹細胞 / トランスフォーミング増殖因子 / 集団遊走 / スフェロイド |
研究実績の概要 |
本申請課題では,間葉系幹細胞との相互作用が,転移におけるがん細胞の浸潤力学場に与える影響を明らかにすることを目的としている.今年度は,昨年度の「研究実績報告書」の「今後の研究の推進方策」に記したように,「転移の主たる形態であるがん細胞の集団遊走における力学的諸特性の理解」を目標に掲げた.そして,次のような結果を得た.(1)直径200μm程度のがん細胞スフェロイドの作製に成功した.(2)そのスフェロイドから,がん細胞を集団的に遊走させることに成功した.(3)スフェロイドは,間葉系幹細胞との相互作用の一要因と考えられるトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)を添加することにより,TGF-β1を添加しないスフェロイドに比べて,10%程度高い成長を見せた.(4)また,がん細胞の浸潤距離もTGF-β1を添加したほうが,60%程度大きくなる傾向を示した.(5)がん細胞スフェロイドの力学場計測に成功した.そして,がん細胞スフェロイドが周囲の細胞外マトリックスに及ぼす力においても,TGF-β1を添加しない場合,その力は経時的(3日間)に変化しなかったが,TGF-β1を添加した場合,その力は経時的に増加していった.さらにその大きさは,TGF-β1を添加しない場合と比較して,3倍以上大きくなることを明らかにした.これらの結果は,間葉系幹細胞との相互作用でスフェロイドを構成するがん細胞の浸潤能が亢進し,転移能が増加していることを意味している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の「研究実績報告書」の「今後の研究の推進方策」に示した項目について,結果を得た.そのため,「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞周囲に存在する間葉系幹細胞に限らず,間質細胞(線維芽細胞,幹細胞,免疫細胞,内皮細胞など)まで範囲を拡大し,がん細胞との相互作用について検討する.特に,がん関連線維芽細胞(CAF: Cancer-Associated Fibroblast)ががん細胞の浸潤時の力学場に及ぼす影響について検討する.CAFとは,骨髄由来の間葉系幹細胞,膵星細胞および常在線維芽細胞から複数の活性化経路により活性化した間質を構成する主要な細胞の1つである.このCAFが,がん細胞の上皮間葉転換(EMT: Epithelial-Mesenchymal Transition)を生じさせ,悪性化を亢進させていることがわかってきているが,主たる要因がCAFの化学的作用であるのか,物理的作用であるのか,あるいは両者であるのか明らかになっていない.本年度は,その点に焦点を当て,がん細胞とCAFの相互作用について検討する.
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