研究実績の概要 |
本研究は,SOFC, SOEC, 水素ガスタービンなどの次世代水素利用機器で共通のキーワードとなる高温水素環境に着目し,現状知見の不足が著しい高温水素中の材料強度劣化について,現象の把握と劣化機構の解明を目的とする.この目的のためには,高温水素中で材料試験を実施できる装置の開発が第1の課題であり,第1年度はこの課題に取り組んだ.高温の水素を取り扱いには,安全の確保が何よりも優先する.そのため,目的や実験条件が本研究とは異なるが,高温と水素の両方が関係する研究を実施している機関(原子力関係)を訪問し,試験機製作の参考とした.さらに,高温の試験を得意とする研究機関を訪問し,高温環境中での計測手法を勉強した.試験装置は,高圧水素中材料試験機の製作に実績のある試験機メーカーと共同で開発にあたっているが,当初の予想よりも技術的に困難であることが次第に明らかとなり,本年度は何とか試験機の導入ができたという段階で年度末を迎えることになった.予定では,年度内に試験機の試運転と試験手順を確立し,数回のSSRT試験を実施することになっていたが,そのスケジュールを果たすことができなかった.次年度に入っても,想定した条件で試験機を稼働するための改良に約2ヶ月を要する見込みであり,今期はまずスケジュールの遅れを取り戻すよう最大限努力する.ただし,この遅れは,高温水素中で材料試験を実施する技術がいかに困難であるかを示すものであり,次世代水素機器の安全性確保のためにはやはり本研究による開発が大いに寄与できるものと考えている.本年度は,実際に高温水素機器を開発中の機器メーカーとも情報交換を行うことができ,次年度の実験条件を決める参考となった.
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