研究課題/領域番号 |
16H04251
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
鈴木 浩文 中部大学, 工学部, 教授 (20282098)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノ多結晶ダイヤモンド工具 / マイクロフライス工具 / 断続切削 / セラミックス / 工具摩耗 / SiC / 超精密切削 / 鏡面切削 |
研究実績の概要 |
パルス・ファイバーレーザに集光光学系を付加したレーザ集光光学系を,既存の4軸制御・超精密加工機に搭載し,加工機上で工具を微細加工できるレーザビームスキャンシステムを試作した. 構築したレーザビーム走査装置を用い,ナノ多結晶材料(NPCD)に対する基礎的な加工特性を評価した.(1)ナノ多結晶材料のレーザ加工の熱加工速度や表面粗さを,へき開性のある単結晶材料(SCD)と比較した.(2)一定時間,レーザビームをナノ多結晶材料に照射すると,レーザビームのエネルギー密度分布により凹面形状に加工される.これは研磨加工における「単一加工痕」に相当し,この形状が最も良好な粗さ分布が得られるレーザ照射条件を解明した.(3)このナノ多結晶材料上の単一加工痕の分布形状から,デコンボリューション理論によりレーザ走査軌跡と速度分布を計算する理論を明らかにした.(4)滞留時間制御レーザ加工システムを構築し,φ0.5~5mm程度のナノ多結晶材料の形状誤差分布を最小にするための形状修正手法,レーザ走査条件を明らかにした. NPCD製マイクロフライス工具の形状を設計し,CAMデータを作成し試作した.摩耗特性を比較するため,先端がシャープなものとアール加工をしたものを試作した. ナノ多結晶材料製マイクロフライス工具の刃先のエッジのアールなど工具の仕様を変化させ,摩耗特性を評価した.工具を超高速空気静圧スピンドルに取り付け,平面形状のSiCを切削加工し,工具の摩耗速度を比較評価した.(1)カーボン板にプランジカットし,その形状を非接触形状測定装置により計測し,そのデジタルデータからPCにて摩耗量を計算し評価した.(2)単結晶ダイヤモンドと比較し,ナノ多結晶材料(NPCD)に対するセラミックスの耐摩耗特性を評価した.NPCDの摩耗速度は単結晶ダイヤモンドより極めて小さいことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
パルス・ファイバーレーザに集光光学系を付加したレーザ集光光学系の試作は,当初の予定より早く構築・試作できた.また,単結晶ダイヤモンドの加工の経験から,ナノ多結晶材料(NPCD)に対する基礎的な加工特性を評価もスムーズに実施でき,φ0.5~5mm程度のナノ多結晶材料の形状誤差分布を最小にするための形状修正手法,レーザ走査条件を明らかにできた.NPCD製マイクロフライス工具の形状の設計,CAMデータを作製,先端がシャープなものとアール加工をしたものを試作も当初の予定より早くできた.そして,ナノ多結晶材料製マイクロフライス工具の刃先のエッジのアールなど工具の仕様を変化させ,摩耗特性を評価した.工具を超高速空気静圧スピンドルに取り付け,平面形状のSiCを切削加工し,工具の摩耗速度を比較評価まで達成できた.特に,単結晶ダイヤモンドと比較した,ナノ多結晶材料(NPCD)に対するセラミックスの耐摩耗特性を評価した結果,NPCDの摩耗速度は単結晶ダイヤモンドより極めて小さいことを確認した.ナノ多結晶ダイヤモンド工具のセラミック,特にSiCに対して,極めて優れた特性を有することを明らかにできた.最後に,SiCに対して,微細な形状のテキスチャリング実験を実施して,その有効性も明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
ナノ多結晶ダイヤモンド(NPPCD)に対しては,H28年度に前倒しに実施できた.ナノ多結晶材料のうちNPCBNでは,刃先エッジのアールなど工具の仕様を変化させ,摩耗特性を評価する.試作した工具を超高速空気静圧スピンドルに取り付け,平面形状の難削材(Ti)を切削加工し,様々な形状の工具の摩耗速度を比較評価する.具体的には以下を実施する. (1)工具をスピンドルに取り付けた直後と,所定の切込回数毎に,カーボン板をダミー材としてプランジカットし,その形状を非接触形状測定装置(三鷹光器㈱製NH3SP)により計測し,そのデジタルデータからPCにて摩耗量を計算・評価する.(2)単結晶ダイヤモンドやcBNの各結晶方位と比較しながら,ナノ多結晶材料(NPCBN)に対するセラミックスの耐摩耗特性を評価し,データベース化する.(3)耐摩耗性を考慮し,最適な工具形状を明らかにする. NPCD製マイクロフライス工具による回折型非球面金型の加工特性の評価をおこなう.最も優れた形状の工具を用いて,非球面・微細形状の超硬合金,SiC金型を超精密切削し,表面粗さ,形状精度,摩耗量の変化を評価し,従来の砥石を用いる研削加工と比較調査する.(1)切削加工実験装置:同時4軸(X,Y,Z,C)超精密加工装置ULG100DSH3.(2)評価装置:(表面粗さ)ZYGO社製表面粗さ計NewView6200,(形状精度)三鷹光器㈱製形状測定器NH3SP,Panasonic製形状測定器UA3P,(3)光学特性の評価:Panasonic社にて評価,(4) NPCDの構造をX線回折,TEM(大学内)にて観察し,表面と内部での加工に伴う変化を観察する.
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