研究課題
高性能磁石の代表例である焼結ネオジム磁石は,焼結体から機械加工により1mm以下の薄板に加工する場合,磁気特性劣化が顕著である.また,厚さ1mm以下の磁石を有効に使うためのサブミリオーダピッチのパルス着磁は,着磁コイルの細線化とジュール発熱によるコイルの溶断から,不可能である.これらの制限は,ネオジム磁石を用いるスマートフォンのレンズ駆動アクチュエータや情報記憶装置用アクチュエータなどの小型化や多自由度化の大きなボトルネックとなっている.本研究では,焼結磁石の低ダメージ薄板加工法,ボンド磁石やPLD(パルスレーザ堆積法)磁石の薄板成形法を検討するとともに,得られた薄板磁石の微細加工,微細着磁パターンを形成する手法の研究開発,また,それらの技術を組合せたマイクロ多自由度アクチュエータの実現を目的とし,磁石の微細加工,微細着磁,応用までを含めた総合的な研究を実施する.平成28年度は,0.5mm以下のネオジム系薄板磁石の成形を目標として,以下の研究を実施した.1)厚さ0.1~0.5mmのネオジム系薄板磁石の切り出し成形を検討し,ワイヤ放電加工による低ダメージな加工条件を見いだした.2)PLD法(パルスレーザ堆積法)による成膜では,Si/SiO2基板上に,長崎大学と共同して,希土類磁石を高速成膜する手法を検討し,基板との密着性の優れたサンプルを作り出すことに成功した.3)ボンド磁石の成形では,NdFeBの微粉体と樹脂を混合したボンド磁石を深さ数十μ程度のガラス基板上に設けた溝に充填し,成形することに成功した.
2: おおむね順調に進展している
申請書記載の目標項目は,ほぼ実施したが,ウェットエッチングを用いた微細加工に関しては,安定した加工のための有効な改善策を見いだすことはできなかった.
本年度同様の項目の研究を進め,更なる加工精度,微細化の検討を推し進めるとともに,H29年度は微細着磁ならびに微細着磁を実施した磁石を用いたマイクロアクチュエータの試作に関しても検討を進めていく.
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IEEE Magnetics Letters
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Sensors and Actuators A:Physical
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