研究課題/領域番号 |
16H04262
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高奈 秀匡 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (40375118)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イオン液体 / 二酸化炭素分離吸収 / 静電噴霧 / 気液混相流 / 電場 / VOF法 |
研究実績の概要 |
本研究は,ナノ秒パルス放電による高活性化学種生成とイオン液体静電噴霧法を融合した,革新的大気環境浄化法を確立することを目的としたものである。平成29年度においては,まず,VOF法による数値シミュレーションにより,電圧印加時におけるテイラーコーンの生成およびテイラーコーン先端からの液糸の生成と分裂過程を明らかにすることに成功した。本研究をまとめた一連の成果は,日本混相流学会論文誌「混相流」に掲載された(2018年3月)。イオン液体として二酸化炭素吸収特性に優れた1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテートを用いた静電噴霧発生装置を構築し,高速度カメラによる可視化解析およびエアロゾルメータを用いた動的光散乱法による生成液滴径分布計測により,印加電圧およびイオン液体供給流量に対する静電噴霧の流体力学的特性を明らかにした。その結果,本装置においてはイオン液体流量および印加電圧,電極間距離により,平均生成液滴径を260 nm から520 nmの範囲で制御することができ,電極距離を一定とした場合では,低流量側で微細化が促進されることが明らかとなった。また,分裂過程は静電気力と表面張力の比であるボンド数と粘性力と表面張力の比であるオーネゾルゲ数により分類することができることが示された。さらに,アクリルチャンバー内の気体を二酸化炭素に置換した密閉容器内でのイオン液体静電噴霧による二酸化炭素吸収実験においては,最適条件下で二酸化炭素吸収量は最大となり,無電場の場合と比較して二酸化炭素の化学吸収が促進されることにより,吸収量が最大で25%向上することが明らかとなった。以上の結果より,二酸化炭素分離吸収におけるイオン液体静電噴霧の有効性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VOF法を用いた数値シミュレーションにより,イオン液体静電噴霧の形成過程が明らかとなり,本研究成果は国内論文誌(日本混相流学会,2018年3月)に掲載されている。また,密閉容器内でのイオン液体静電噴霧による二酸化炭素吸収実験においては,条件を最適化することで無電場の場合と比較してCO2の吸収量が飛躍的に向上する結果が得られた。これは,イオン液体静電噴霧により比表面積が大きい200 nm程度の微細液滴が生成され,界面における化学反応が促進されたためである。本研究結果により,二酸化炭素分離吸収におけるイオン液体静電噴霧の有効性が明確となり,本技術を特許に申請している(特願2018-060923)。以上の研究成果から本研究課題はおおむね順調に進展していると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られたVOFによるイオン液体静電噴霧における液滴形成過程の知見をもとに,今年度はノズル下流における液滴挙動を解析し,作動条件に対する噴霧の空間濃度分布を明らかにする。具体的には,液滴間に作用するクーロン力を考慮しつつラグランジュ的に個々の液滴を追跡することで噴霧の広がりを明らかにする。さらにイオン液体の二酸化炭素吸収速度係数を用いて非定常拡散方程式をカップリングさせて解くことにより,イオン液体静電噴霧による二酸化炭素吸収効果を解明し,静電噴霧による二酸化炭素吸収のための最適条件を見出す。実験においては,流動セルを作成し,二酸化炭素・窒素混合気体の流動下におけるイオン液体静電噴霧による二酸化炭素分離吸収特性を明らかにし,数値シミュレーションにより得られた最適条件をもとに実験を行い,計算の妥当性を評価する。次に,静電噴霧下において安定に放電を維持することのできる作動条件を実験により求め,複数のノズルを配置した際の相互干渉効果を解明した上で,最適なノズル配置を得る。
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