本研究は,ナノ秒パルス放電による高活性化学種生成とイオン液体静電噴霧法を融合した,革新的大気浄化法を確立することを目的としたものである。平成30年度においては,電場により帯電液滴に作用する静電気力および帯電液滴間の相互作用力を考慮して個々の液滴挙動を解析することに成功し,作動条件に対するイオン液体静電噴霧における噴霧形状を明らかにした。その結果,帯電液滴は静電気力によって軸方向に加速され、液滴間の相互作用力によって半径方向に広がりを持つことが分かった。本結果より,できるだけ低印加電圧の下で液滴を微細化することにより噴霧角が増加することが明らかとなった。さらに,イオン液体の二酸化炭素吸収過程を考慮した物理モデルを構築し,二酸化炭素濃度分布の経時変化を明らかにすることで,印加電圧に対する二酸化炭素吸収特性を解明した。液滴が粘性抵抗力により減速されると,相互作用力によって上流の液滴も減速するため、液滴分布内部で局所的に液滴数が増加し、分布内部で最も二酸化炭素吸収量が高くなることが分かった。 また,本数値シミュレーション結果を基に,アクリル容器内においてイオン液体静電噴霧を行い,二酸化炭素吸収特性を明らかにした。本実験では,低濃度の二酸化炭素・窒素混合気を導入し,アクリル容器下流における二酸化炭素濃度を計測することでイオン液体静電噴霧による二酸化炭素吸収量を定量的に評価した。その結果,二酸化炭素吸収量は,無電場時に比べて最大で約3.2倍高くなり,反応速度係数が約10倍となることこから,静電噴霧による微細化により二酸化炭素分離吸収が促進されることが明らかとなった。
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