研究課題/領域番号 |
16H04279
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 修平 広島大学, 工学研究科, 准教授 (60379899)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 仕事関数 / イオン化ポテンシャル / 薄膜 |
研究実績の概要 |
光電子収量分光装置の開発を目指して設計を行った。サンプルホルダーを100 mm角のSUS板で作成し、入射光が効率よくサンプルに届くように開口部の大きさを十分にとった。タングステン製の極細ワイヤーを用いて開口率90%としている。大気圧下での測定を目的としているため光電効果により得られる電子は大気中の水分子や酸素分子など様々なものに捕捉されそのままでは極板にとどかず検出できない。そのため極板間に最大1000 Vの電圧を印加できるようにしている。光電効果による光誘起電流は非常に小さいことが予測されるため1000 V印加時のリーク電流が1 fAいかになるようにテフロン製のスペーサーなどを用いて絶縁には注意を払っている。測定系は光の取り回しの良さを考え、重水素・ハロゲンのファイバー光源を用い、モノクロメーターに導入、モノクロメーターからもファイバー出力を選択しサンプルに照射することとした。 測定系のテストとして仕事関数が既知の金を用いることにし、スパッタにより基板上に薄膜を形成して測定を行った。最初外部のノイズが思った以上に大きく信号はノイズの波に埋もれてしまい観測することができなかった。そこで測定部をSUS製の電磁シールドで覆うことで対応したところ微少ではあるが信号を確認することができた。仕事関数の値を既往の値と比較したとき日によって値が一定でないことが確認された。これはサンプルが薄膜であるため雰囲気の影響を受けている可能性があり雰囲気ガスを置換できる装置内での計測が最終的な対象物を計測する上で必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
装置の開発がほぼ完了しテスト試料での測定も行うことができた。サンプルのスケールが小さい場合雰囲気の(界面・表面)の影響を強く受けることが示唆されたた。最終目的である亜鉛・シリコン酸化物も非常に薄い薄膜であるため雰囲気を制御できる装置内で行う必要があることが明らかになった。多少の予定変更を余儀なくされたがこれも初年度に予想以上に研究開発が進展した成果でありおおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
上記で述べたように薄膜三桜ルに関しては雰囲気の影響を強く受ける可能性があるため雰囲気のガス置換が可能な装置内で計測できるように測定系を改良する必要がある。今後はまず測定系の改良を行いその後金以外の既知のサンプルでもテストを行うことで光電子収量分光装置の開発を行う。これと並行して亜鉛・シリコン酸化物の酸化度を制御し最終目的としている酸素欠陥によるイオン化ポテンシャルの変化が第一原理計算から予測されたように起こりうるのかを検証していく。
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