研究実績の概要 |
細胞の基本的挙動の一つとして、細胞の形態変化のダイナミクスに注目し、高温環境条件での3次元的形態特性、および、細胞の生存率の時系列変化を解明すると共に、関連する各々の事象を数学的に記述するための高精度速度論的モデルを提案・展開する。 一定温度に保持された、培地中の基質上の付着細胞に対して、デジタルホログラフィー顕微鏡を用いた3次元的・タイムラプス撮影を行った。本年度は、まず、定性的・定量的・統計的特性の概要を把握するために、生理的温度に比較的近い高温の極く限られた温度条件(37, 42, 44℃)で、温度の影響を調べた。以下に、結果をまとめて述べる。 1)通常の培養条件(37℃)では、細胞は、伸縮、扁平化、可逆的球状化、分裂を伴い、能動的に盛んに動き回る。細胞の体積は、分裂直前には約2倍に増加すると共に、分裂前後で細胞の体積は保存される。 2)温度上昇に対して、細胞の能動的移動は不活発化し、正常な細胞分裂の頻度は減少し、その代わりに、分裂未遂・再融合、融合・崩壊というような、特異的な挙動の細胞や、形態崩壊を起こす細胞が出現する。44℃では、細胞の能動的な移動は殆どなく、細胞分裂もなく、細胞は、不可逆的球状化、体積増加の後、ブレブ形成を経て、急激な形態崩壊と体積減少に至る。不可逆的球状化、ブレブ形成、形態崩壊する各細胞数割合は、反応速度論的に増加し、72hr後には、殆ど全ての細胞が崩壊する。42℃の場合の挙動(能動的移動、細胞分裂、形態崩壊、細胞の損傷・死滅に関わる事象など)は、37℃の場合と44℃の場合の中間的特性である。
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