研究実績の概要 |
一定温度に保持された、培地中の基質上の付着細胞に対して、デジタルホログラフィー顕微鏡を用いた3次元的・タイムラプス撮影を行い、細胞の形態変化の定性的・定量的・統計的特性を調べると共に、温度の影響を解明した。温度条件は、通常の培養条件の37℃、および、高温の40.0~47.5℃までの7通り(40.0, 41.0, 42.0, 43.0, 44.0, 45.0, 47.5℃)で、計8通りとした。また、細胞損傷・死滅に関して、細胞分裂がなく、細胞は、不可逆的球状化、ブレブ形成を経て形態崩壊に至る過程に対して、速度論的モデル化を展開した。さらに、不可逆的球状化、ブレブ形成、形態崩壊する各細胞数割合の時系列変化の実験結果に基づいた逆問題解析により、当該形態変化の速度定数を決定した。具体的には、 1) 細胞の特徴的な挙動は、正常な挙動(変形、移動、分裂)と損傷・死滅に関わる挙動(不可逆的球状化、次いでブレブ形成を経て、形態崩壊に至る)に大別される。37.0℃では、正常な挙動が盛んである。高温ストレス状態(40.0~47.5℃)では、基本的傾向として、温度上昇と共に、正常な挙動が減少・消滅するのに対して、逆に、損傷・死滅に関わる挙動が出現・増加する。その変化の境界温度は概ね42~43℃であり、43.0℃以上では細胞増殖は停止する。44℃以上では損傷・死滅挙動が支配的である。また、形態崩壊が出現する42℃では、明瞭な細胞質の小体形成を伴うアポトーシスが起こり、ネクローシスと共存する。 2) 形態変化のダイナミクスにおける細胞数変化を数学的に記述するための速度論的モデル化を提案・展開した。細胞数変化の実験結果に基づく逆問題解析から,モデルパラメータ(形態変化の速度定数)を決定すると共に、実験結果とモデルによる計算結果の比較から、モデルの妥当性を示した。
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