研究実績の概要 |
一定温度に保持された、培地中の基質上の付着細胞に対して、デジタルホログラフィー顕微鏡を用いた3次元的・タイムラプス撮影を行い、細胞の形態変化の定性的・定量的・統計的特性を調べると共に、当該特性に対する温度の影響を解明した。温度条件は、通常の培養条件の37℃、および、低温の35.0, 30.0, 20.0, 8.0, 4.0, 2.5℃の6通りで、計7通りとした。次いで、細胞損傷・死滅に関して、細胞増殖を伴う場合、細胞が、不可逆的鈍形化(不可逆的球状化を含む)、ブレブ形成を経て形態崩壊に至る一連の過程に対して、速度論的モデル化を展開した。本モデルを、細胞増殖を伴う温度条件(42.0, 41.0, 40.0, 37.0 35.0, 30.0℃)に適用した。また、細胞崩壊に対する、抗酸化作用を有する添加剤の効果を調べた。 具体的には、 1. 細胞の特徴的な挙動は、正常な挙動(変形、移動、分裂)と損傷・死滅に関わる挙動(不可逆的鈍形化、次いでブレブ形成を経て、形態崩壊に至る)に大別される。37.0℃に近い条件では、形態崩壊の出現に対して、明瞭な細胞質の小体形成を伴うアポトーシスが起こり、ネクローシスと共存する傾向を示した。 2. 形態変化のダイナミクスにおける細胞数変化を数学的に記述するための速度論的モデル化を提案・展開した。各形態変化の細胞数割合の時系列変化の実験結果に基づいた逆問題解析から、モデルパラメータ(形態変化の速度定数)を決定すると共に、その温度依存性を体系的に明らかにした。実験結果とモデルによる計算結果の比較からモデルの妥当性を示した。 3. 抗酸化作用を有する添加剤(ケルセチン3グルコシド、添加濃度0.01%(w/v))は、高温(47.5℃)・低温(4.0, 2,5℃)両条件で、細胞の形態崩壊に対して保護効果を示した。
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