研究実績の概要 |
前年度までに成果を挙げることができなかったサーモリフレクタンス法の確立と第一原理計算を用いた界面熱抵抗のアプローチを最終年度の目標とした.サーモリフレクタンス法については,Si薄膜の干渉によって温度測定の感度を高める手法を確立し,熱伝導率測定へつなげる成果を得た.測定精度を高めるために波長516nmと640nmの2つのレーザーを用いた.一方で測定精度を高めるためには,生成する薄膜の膜厚の均一化が測定精度を大きく左右する問題点も浮き彫りとした.第一原理計算については,有機-無機界面を扱う手がかりとして,有機-無機ハイブリッド材料であるMASnI3ペロブスカイトを対象として計算のノウハウ積み上げを試みた.Quantum-ESPRESSO第一原理計算を用い,結晶の安定構造を得て,フォノン分散関係を計算し,ペロブスカイトの低い熱伝導率は2,200m/s程度と低いフォノン群速度に起因していることも明確となった.計算された値は既に報告されている2,057~2,348m/sと比較しても妥当な値であった.フォノン群速度を手掛かりに,Diffuse Mismatch ModelでBi2Te3と生じる界面抵抗を計算するなど,界面熱抵抗を考察する手法を構築した.期間全体としては,薄膜技術と3オメガ法による組み合わせで異種材料界面熱抵抗の測定法を確立したこと,有機-無機界面熱抵抗は無機-無機界面熱抵抗より1桁大きいことを示したこと,群速度など物質に起因する値の大きな違いが界面熱抵抗に大きく起因していること,それらを第一原理計算で調べるノウハウ構築を進めたこと,上記とは独立してサーモリフレクタンス法で温度測定を精度よく測定するノウハウを構築したことが研究実績として挙げられる.
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