前年度熱伝導率計測を試みた基板上の同位体グラフェン周期構造では、レーザーを照射した際、一般的なグラフェンに対し1.6倍の温度上昇が見られたことから、熱伝導率が低下していることは明らかであったが、基板への熱の逃げのために定量的な評価は困難であった。今年度は単結晶の同位体ヘテロ周期グラフェンをCVDにより作製した後、架橋構造としてラマン分光法を用いて熱伝導特性を詳細に評価した。さらに単結晶グラフェンに歪みを印加した際の熱伝導特性も計測した。 1.CVDにおいて、ガスを切り替えることにより12Cと13Cからなるグラフェンを交互に組み合わせ、ボトムアップで界面数を制御して架橋構造グラフェンを作製した。 2.界面数が3までのグラフェンにおいては、界面数に比例して熱抵抗が上昇し、一界面あたりの界面熱抵抗は、およそ125um^2K/Wと見積もられた。 3.界面数が4のグラフェンでは、熱抵抗が劇的に上昇した。このとき界面間隔はおよそ600nmとなり、グラフェン中のフォノンの平均自由行程と同程度以下になることから、熱輸送において、フォノンの擬弾道的輸送が支配的になったためであると考えられる。 4.単結晶グラフェンでも多結晶グラフェン同様、歪みにより熱伝導率の低下が確認できた。このことから、グラフェン中のドメイン境界が熱抵抗変化に起因しているのではなく、グラフェン格子に印加された不均一歪みがフォノン伝導の抑制に寄与していると考えられる。
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