研究実績の概要 |
燃焼振動の非線形ダイナミックスの解明とそれに基づく燃焼制御技術の体系化は重要な研究課題である. 本研究では, これまでの燃焼工学分野では取り入れられていない力学系理論, 記号力学, 複雑ネットワークなどの複雑系数理の基礎理論と燃焼学を融合させた新しい視点から, 燃焼振動の非線形ダイナミックスの性質を解明し, 工学的に応用することを目的としている. 今年度, 以下の点を明らかにした. (1) 渦同士の相互作用に着目した乱流ネットワークを導入した. ネットワーク構造の強度の確率密度関数に明瞭なべき乗則が現れ, 燃焼振動の空間的なネットワーク構造にはスケールフリー性が存在する. ネットワーク構造は時間的に変化し, スケールフリー性が維持される寿命時間の確率密度関数にもべき乗則が現れる. (2) 位相固定平均を施した速度場と乱流ネットワークの強度の空間分布を求めた. 圧力変動が極小となるときにノズル出口付近にPrimary hub が存在する.また, ノズル出口からせん断層領域にかけて存在している渦列は複雑な結合を有し, Primary hub 付近のコミュニティー間で強い相互作用を持つ. (3) 水平可視グラフのモチーフと主成分分析を組み合わせることで燃焼振動の前兆を捉えることが可能である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで圧力変動とOH*自発光強度変動に複雑ネットワークの一つである可視グラフ法を適用してきた. 今年度になり, 燃焼振動の流体力学的構造に複雑ネットワークを導入することが可能となり, 研究実績(1)-(3)を得た. これらの研究実績は, 次年度に予定している燃焼振動を能動制御したときのネットワーク構造の解明に深く関わるものである. これらの研究成果は, 米国物理学会の学術誌Physical Review Eに掲載されている. また, 競争力の非常に高い第39回国際燃焼シンポジウムでの口頭発表も決定している. 以上から, 進捗状況の区分を(2)とした.
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