研究課題/領域番号 |
16H04287
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065)
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研究分担者 |
小助川 博之 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (00709157)
内一 哲哉 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70313038)
三木 寛之 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (80325943)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 渦電流探傷法 / 導電性ダイヤモンドライクカーボン / 接着接合 / 電磁非破壊評価 / 繊維強化プラスチック / 電磁センサ / 非接触型インジケータ / 接着強度 |
研究実績の概要 |
本研究では、繊維強化複合材料の接着界面に生じる剥離損傷を外部から検出できる電磁非破壊評価法の開発を目指す。本研究課題を達成するため、耐環境性を有する金属含有導電性ダイヤモンドライクカーボン(Me-DLC)薄膜を接着界面に埋め込んで非接触型インジケータとし、電磁誘導現象を利用してMe-DLCインジケータに生じる渦電流信号の変化を計測することで、界面の損傷状態を評価する手法を考案している。当該年度では、以下の事項について研究を進めた。 ① Co-DLCインジケータの渦電流試験と解析解との比較評価 平成28年度に得られた成果から、高い渦電流信号を示すコバルト含有ダイヤモンドライクカーボン(Co-DLC)をインジケータとする接着フィルムを作成し、これを対象とする渦電流試験装置を構築した。Co-DLCにき裂損傷を人工的に与え、この信号を精度よく検出できる差動方式渦電流試験プローブを製作し、リフトオフと渦電流信号の関係を調査した。その結果、リフトオフが10ミリメートルであってもき裂損傷を検出できることを確認した。また、軸対称モデルを用いた解析解との比較を行ったところ、リフトオフに対する渦電流信号強度の変化の傾向は一致したものの、信号強度に不一致がみられた。これはCo-DLCの電磁的特性に異方性と周波数依存性があるためであると推測される。 ② Co-DLCインジケータを導入することによる接着強度への影響評価 Co-DLCを接着フィルムに成膜することによる接着強度低下の評価を行った。Co-DLCをサンドイッチしたアクリル系接着フィルムを用いて2枚のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を接着し、引張せん断接着強さ試験により接着強度の評価を行った。Co-DLCを導入することで、接着強度(せん断接着強度)は9%程度低下することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度に得られた成果から強磁性元素であるコバルトのナノクラスタを導入したDLCを用いることで十分な渦電流信号強度を得られることが確認できた。レーストラック型の励磁コイルを用いることで、Co-DLCに生じたき裂損傷を10ミリメートルのリフトオフを設けた状態でも十分に検出できることを確認でき、計画通りCo-DLCを非接触型インジケータとする接着接合部の渦電流探傷システムの性能評価ができた。また、当初の計画に加え、接着フィルムにCo-DLCを導入することによる接着強度への影響を評価することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、以下の事項について研究を進め、本課題を完了する。 ① Co-DLC薄膜の電磁的特性の周波数依存性と磁気異方性の計測と解析モデルの提案 前年度において、Co-DLCの渦電流信号強度が解析解と一致しないことが分かった。これはCo-DLCの磁気異方性と電磁的特性の周波数依存性の影響によるものと考えられる。Co-DLCの電磁的特性についてより詳細に調べ、これを精確に表現できる解析モデルの提案を行う。 ② Co-DLCパターンの構築と損傷前後における渦電流信号の評価 マスキングを用いた成膜により、Co-DLCのアレイ状パターンを接着フィルム上に形成する方法を開発する。これをノッチを設けたGFRPに接着してコンパクトテンション(CT)試験片とし、一方向に引張荷重を加えることでき裂を発生・進展させ、Co-DLCのパターンに損傷を与える。き裂の進展とCo-DLCの渦電流信号の経時的変化を、同期させた高速度カメラと渦電流試験装置を用いて計測する。これにより、渦電流を用いたCo-DLCを非接触型インジケータとするFRP接着界面の電磁非破壊評価システムの性能と信頼性を評価する。
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