研究課題/領域番号 |
16H04288
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中野 政身 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (40147947)
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研究分担者 |
戸塚 厚 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (40626313)
阿部 浩也 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (50346136)
TIAN TONGFEI 東北大学, 流体科学研究所, 助教 (80772714) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気レオロジー流体 / 磁性パウダー / 鉄粒子 / ナノ粒子 / 流動性 / ブレーキ / 制動トルク / 耐久性 |
研究実績の概要 |
これまで創製してきた数種のドライMR流体の中で、流動性及びMR効果両面で最も優れたドライMR流体として、数μmのカルボニル鉄粒子の表面に0.5wt%のナノシリカ粒子を摩擦式粉砕機でコーティングしたCore-Shell構造をもつ磁性粒子パウダーからなるドライMR流体を開発している。この最適なドライMR流体をブレーキ用途としての基本的な性能評価を行なう目的で製作した単一円盤(直径φ70mm)を有する基本的なドライMR流体ブレーキ試験装置(外径φ120mm)にすでに確立してある吸引法によって充填し、ブレーキとしての発生トルク試験や耐久性試験等の基本的な性能試験を実施してドライMR流体のブレーキへの適用性の評価を行なった。その結果、カルボニル鉄粒子だけからなるドライMR流体に比して、流動性が向上しているため無磁場時の制動トルク(引摺りトルク)が約半分と低下し、かつ磁場印加時のトルクも若干低下するが、油ベースのMR流体の推定トルクに比して1.0T程度の磁場印加に対しても磁気飽和現象が観察されず約1.5倍程度のトルクを発生し高い性能を示すこと、そしてその磁場に対する発生トルクの過渡応答も時定数が約13ms程度とかなり速いことを明らかにした。また、ブレーキングによるドライMR流体の発熱特性についても試験し、最大ブレーキトルクで4分間制動し続けた場合にドライMR流体の温度が約80℃程度まで上昇しているが、特に問題は生じていないことを確認している。さらに、長時間のブレーキのON(5s)/OFF(10s)による耐久性試験では、280時間で67,200サイクルのON/OFFで制動トルクが初期トルクの約10%程度しか低下せず、かつドライMR流体の温度が約50~60℃程度に維持され、引摺りトルクは約半減するという良好な結果を得ており、ドライMR流体のブレーキへの適用が十分可能なことを実証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
流動性及びMR効果の向上の両面から最適なドライMR流体を開発することができ、単一円盤を有するドライMR流体ブレーキ試験装置を用いたブレーキ性能の基本的特性と耐久性を評価することができた。その間、ドライMR流体ブレーキ試験装置のシールからのドライMR流体の漏れ等の不具合が発生し、そのシール機構の修復と改善に時間を要したが、ドライMR流体ブレーキの基本性能を把握することができ、今後開発する車両用ブレーキ等への応用に際しての基本データを整えることができたので、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの単一円盤型ドライMR流体ブレーキ試験装置を用いた基本的なブレーキ性能の測定・評価結果に基づいて、まず発生トルクの予測を含めた磁場解析を援用したドライMR流体ブレーキやクラッチに関する設計法を確立する。ドライMR流体を活用した動力伝達・制動機構は、電気的に高い制御性を有していることから、全電動化等の将来を見据えて電気自動車への適用が最適である。そこで、超小型電気自動車(コムス)の四輪のホイール内に搭載することを前提に、確立した設計法に基づいてドライMR流体を活用した多層円盤型のブレーキを設計・製作し、トルク特性、トルク応答特性、発熱特性、耐久性などの基本的な特性を把握した後、四輪用に4台製作して小型EVに実装する。様々な走行状況での試験走行を行うことにより、その優位性や実車レベルでの問題点を把握し改善を図ることによって、より信頼性の高いブレーキを開発する。この過程で開発したドライMR流体ブレーキは電気的な制御性が高いことから、ブレーキの制動特性を柔軟に変えることが可能なため、その制御方法についても検討する。
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