研究課題/領域番号 |
16H04299
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
橋本 稔 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60156297)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工筋肉 / ソフトアクチュエータ / PVCゲル / フレキシブル電極 / 積層構造 |
研究実績の概要 |
本研究では、ポリ塩化ビニル(PVC)とフレキシブル電極を用いて、生体筋と同等の特性を有するソフトアクチュエータの創製を目的とする。平成28年度はソフトアクチュエータの試作及び特性の評価、特性向上のための改良を行った。 フレキシブル電極としてカーボングリースを使用し、これを厚さ185umのPVCゲルシート (15×15mm) の両面へ塗布(塗布面積:169mm2)してPVCソフトアクチュエータを作製した。特性評価の結果、印加電圧1300Vで収縮率は0.02%と極めて小さいことが分かった。 この特性を改善するために、PVCゲルの組成調整を実施した。PVCゲルの可塑剤含有量を増やすことで、より柔軟なPVCゲルが得られ、変形量の増大が見込まれるためである。従来の可塑剤含有量はPVCに対して質量比1:4であるが、今回は質量比PVC:DBA=1:6とDBA含有量を1.5倍に増やしてPVCゲルを作製した。このPVCゲルを用いてカーボングリースを電極としたPVCソフトアクチュエータを作製し、その特性評価を実施した。その結果、印加電圧400Vで収縮率1.15%が得られた。また、PVCゲルシートの全面にカーボングリースを塗布することにより、変位量の増大が確認できた。さらに、PVCゲルシートの膜厚を185μmから100μmに薄膜化することにより、収縮率の増大を得ることができた。 以上から、可塑剤の増加、フレキシブル電極の面積増大、PVCゲルシートの薄膜化により収縮率の改善ができることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画ではアクチュエータの評価を実施した後、積層構造アクチュエータの特性評価と研究成果のとりまとめまで実施する予定であったが、アクチュエータの収縮率が極めて小さい結果となり、その改善に時間を要したため。PVCゲルの組成調整などの改善策の実施により収縮率は002%から50倍の1.15%まで向上したが、目標値までには更なる特性改善が必要である。更なる特性改善に向けて、組成調整やフレキシブル電極作成を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度ではH28年度研究結果に基づいて積層型アクチュエータの特性評価を実施し、研究成果をとりまとめる。また、現在使用している導電性グリースは均一に塗布することが難しく、特性の安定性に影響する。また、その性質から周囲汚染などの問題もある。そこで、PVCゲル内にカーボンパーティクルを混合させ、導電性PVCゲルを作製し、それをフレキシブル電極として積層型ソフトアクチュエータを試作し評価する。
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