研究課題/領域番号 |
16H04300
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
秦 誠一 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50293056)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノマイクロメカトロニクス / MEMS / コンビナトリアル技術 / 材料創成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,MEMS技術とコンビナトリアル技術を応用・融合した新しい超ハイスループット評価技術を開拓し,新エネルギー,省エネルギーや耐環境材料,医療技術,細胞観察などグリーン/ライフ・イノベーションにつながる新材料の効率的・迅速な創成に資することである.本研究期間では,数ミリ角,厚さ数十マイクロメートルオーダの多種多数個の薄膜サンプルを,MEMS技術を応用し同時または別個に加振すると共に,その振動状態をセンシングすることで,各種物性を超ハイスループット評価することができる集積化MEMS薄膜ライブラリを製作する.これを用いて広角スキャナ用高弾性高疲労強度材料や,超小型トルクセンサ用高性能磁歪材料などイノベーションに資する新材料の超ハイスループット評価が可能であることを実証する. 本年度は,最初に圧電フィルム上にサンプルを転写する集積化MEMS薄膜ライブラリの試作を検討したが,圧電フィルムに熱処理した磁歪材料を転写することが困難であることが判明し,この方式の検討を断念した.つぎに,Si製カンチレバー基材上に成膜,熱処理を行った磁歪材料をサンプルとし,それを評価基板に接合することで,集積化MEMS薄膜ライブラリの基本構造の実現に成功した.また,コンビナトリアル新対向スパッタ装置を改良し,上記サンプルの成膜されるカンチレバー基材サイズ内で無視できる程度の組成傾斜となるように,組成傾斜を調整できることを確認した. 以上の成果は3件の招待講演を含む5件の学会発表,1編の書籍にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,加振型集積化MEMS薄膜ライブラリの基礎検討として,1)基本構造の検討,2)コンビナトリアル成膜装置の改良を行った.具体的には,すでに本研究の準備として独自に検討してきた圧電フィルムをマイクロアクチュエータとした薄膜金属のマイクロ疲労試験法を発展させ,その集積化とセンシング機能を圧電フィルム上に搭載する方法(以下ソフトタイプ)を検討した.検討の結果,圧電フィルムに熱処理した磁歪材料を転写することが困難であることが判明し,ソフトタイプの検討を中断した. つぎに,CMOSプロセスと親和性の高いSi基板上にセンサ機能やアンプ機能を集積化した方法(以下ハードタイプ)を検討した.具体的には,一つの基板上に全ての機能およびサンプルとなる薄膜を一括製作することを検討したが,磁歪材料における熱処理がセンサおよびアクチュエータ回路部に悪影響を与えることが確認したため,センサ機能搭載の評価基板と,熱処理など必要な処理を行ったサンプルをカンチレバー基材上に作製したサンプル基板を製作し,両者を接合後,サンプル基板の不要部分を除去することで加振型集積化MEMS薄膜ライブラリの基本構造製作に成功した. 検討の結果,カンチレバー基材として,薄膜金属ガラスではサンプル薄膜成膜後,サンプルの種類によっては十分真直なカンチレバーを得ることができないことが判明したため,より剛性の高い単結晶Siを基材とすることで,十分真直なカンチレバーを評価基板に接合することに成功した. コンビナトリアル成膜装置の改良としては,コンビナトリアル新対向スパッタ装置に必要な改良を行うことで,サンプルサイズ内で無視できる程度の組成傾斜となるように,組成傾斜を調整できることを確認した.以上より進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
・加振型集積化MEMS薄膜ライブラリの応用 1)センサ機能評価基板の試作 本年度はソフトタイプとハードタイプの検討を行ったが,上記の通り実用性と今後の発展性から,ハードタイプの集積化MEMS薄膜ライブラリの検討に集中する.製作には研究代表者の所属する名古屋大学マイクロ・ナノメカトロニクス研究センターの共同利用設備を利用する.次にハードタイプに適したサンプル基板製作プロセスの検討を引き続き行い,サンプルに必要な熱処理を加えた後,評価基板と接合し,サンプルのみを評価基板にカンチレバー状に保持し,集積化MEMS薄膜ライブラリを製作するプロセスの完成度を高め,プロセスを完成させる. 2)加振型集積化MEMS薄膜ライブラリの試作 上記,センサ機能搭載の評価基板とサンプル基板の試作により得た集積化MEMS薄膜ライブラリを利用して,加振型集積化MEMS薄膜ライブラリを試作する.広角スキャナ用高弾性高疲労強度材料(以下,高疲労強度材料)探索用のライブラリも,超小型トルクセンサ用高性能磁歪材料(以下,磁歪材料)探索用ライブラリも基本的な構造は同一であるが,高疲労強度材料探索ではより大振幅の加振とその変位測定,および試験片の破断判定が重要となる.最初に,ライブラリでの評価の妥当性を検証するため,従来研究により薄膜の物性が明らかになっている材料を用いて,集積化MEMS薄膜ライブラリの性能評価を行う. ・グリーン/ライフ・イノベーションに資する新材料の探索と実用化 以上の試作により明らかとなった問題点を解決し,高疲労強度材料探索用および磁歪材料探索用の加振型集積化MEMS薄膜ライブラリを製作する.
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