平成30年度においては,一昨年度試作した磁気ギアードモータを移動支援機器に適用することを目的として,まずは3D-CADを用いて車体の設計を行った。市販されている複数の移動支援機器の形状・寸法を参考にして設計した結果,外形寸法は幅750 mm,高さ880 mm,奥行き730 mmとなった。次いで,磁気ギアードモータを駆動するドライブシステムについては,車体に搭載することを勘案し,小型軽量を第一に作製した。具体的には,モータ駆動回路にはSTMicroelectronics社製のX-NUCLEO-IHM08M1とNUCLEO-F303REを採用した。また,このモータ駆動回路と通信し,トルク制御等を実行するMCUには,ARM社製のmbed LPC1768を採用した。使用者とのインターフェースには可変抵抗器を用い,これに流れる電流の値に比例したq軸電流指令値をモータ駆動回路に送信する。試作したドライブシステムの動作確認をトルクベンチ上で行った結果,可変抵抗の値に対して線形的に速度を制御できることを確認した。 今年度は,磁気ギアードモータのポールピースホルダの改良も行った。具体的には,これまで使用していたエンジニアリングプラスチックから,より剛性の高い繊維強化プラスチックに変更した。その結果,機械損が最大で約10 W低下し,効率は約90%を達成した。これはモータ部,ギア部で効率95%以上を同時達成したことを意味する。 さらに,今年度は移動支援機器の走行抵抗曲線を試算し,ここから試作機の有用性について評価を行った。その結果,磁気ギアードモータを後輪2輪にインホイールダイレクトモータとして適用し,バッテリ電圧を24 Vで駆動した場合,平地では時速4 kmでの走行が可能であることが明らかとなり,試作機の有用性が明らかとなった。今後は,移動支援機器の試作機を完成させ,実走行試験を行う予定である。
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