研究課題/領域番号 |
16H04311
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
辻 俊明 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60434031)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機械学習 / モーションコントロール / マニピュレーション |
研究実績の概要 |
前年度までの研究成果により、リカレントニューラルネットワーク(RNN)の一種であるSequence to Sequence(Seq2Seq)モデルが運動の制約を考慮した学習に有効であることが判明している。本年度はSeq2Seqモデルの学習性能を高めるための方法論を様々な視点から検証し、その設計論を構築した。Seq2Seqモデルはこれまで、機械翻訳に広く応用されてきたが、機械翻訳と比較して運動データはサンプリング時間が極めて短くSequenceが長くなる。このことが学習の性能に影響を与えるため、軌道のサンプルを複数纏めるチャンク化を実施し、多段型のネットワークを構成することによって学習性能を高めた。また、動力学シミュレーションを用いて学習用のデータを予め多く生成しておくことによって性能を高める手法を検討した。そして、カリキュラム学習を適切に導入することによってその性能が高められることを確認した。また、本研究課題では対象物との接触を伴う作業を対象とするため、ロボットから位置の情報のみならず力覚情報を取得する必要がある。その一方で力覚情報のダイナミックレンジが小さいために繊細な力を検出できないことが、高度な技能運動を学習する上での課題となっていた。そこで1g重から100kg重までの高いダイナミックレンジを持つ6軸力覚検知手法を開発した。上記の成果は本年度1年間で国際論文誌2編に掲載されたほか、査読付き国際会議にも7件発表されるなど、広く世界に発信されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までは、運動技能の抽象化にはどのような手法が適しているかを調査した。機械翻訳に用いられるRNNの一種であるSequence to Sequence(Seq2Seq)モデルを運動制御に転用することによって、動力学的拘束を考慮した自律的マニピュレーションが可能になることが確認されている。本年度はその能力を高めるための試みを当初の予定通り検証を進め、多くの成果が得られた。それに加えて運動学習の基礎となる力覚検知の手法について検討を進めたところ、極めて高い性能の検知手法が実現された。提案時の内容を超える成果が得られているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度として、力の情報を含んだ自律的マニピュレーションについて研究を進め、単一動作に限らず複数の動作の抽象化が可能であることを実証する。また、実際に人の技能運動を記録・抽象化し、得られた情報を解析することによって技能がどのような形でモデル化されているかを調査する。RNNの一種であるSeq2Seqモデルを用いるが、その比較対象としてサポートベクターマシンや回帰分析手法の検討も併せて進める。
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