昨年度までは、運動技能の抽象化にはどのような手法が適しているかを調査した。機械翻訳に用いられるRNNの一種であるSequence to Sequence(Seq2Seq)モデルを運動制御に転用することによって、動力学的拘束を考慮した自律的マニピュレーションが可能になることが確認されている。 上記の成果を踏まえ、本年度は人の技能運動を記録・抽象化し、得られた情報を解析することによって技能がどのような形でモデル化されているかを調査した。具体的にはお好み焼きを掬ってひっくり返すという動的な動作について人やロボットの運動データを収集・解析し、ニューラルネットワークによる抽象化を行った。掬う動作とひっくり返す動作では環境から受ける力学的制約が全く異なるが、これら両方の動作が同一の理論で生成可能になることから、単一動作に限らず複数の動作の抽象化が可能であることが実証された。また、これらの抽象化を進めるうえで環境やロボットの制御系を剛性楕円という変数を介して表現することにより、より高次の技能運動の設計が可能になることを確認し、動力学シミュレーションおよび実機を用いてその理論を実証した。併せてニューラルネットワークの潜在変数を直接操作することによって生成される高次の軌道を容易に操作できることを確認した。この結果からは人から学習した動作をそのまま再生するのみならず、編集・再構成してロボットに実装できる可能性が示唆されたと言える。
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