研究課題/領域番号 |
16H04317
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹野 裕正 神戸大学, 工学研究科, 教授 (90216929)
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研究分担者 |
中本 聡 神戸大学, 工学研究科, 助手 (10198260)
市村 和也 神戸大学, 工学研究科, 教室系技術職員 (20756001)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核融合 / 新エネルギー / 直接発電 |
研究実績の概要 |
当初計画に対して遅れも見られるが,概ね目的達成に向けて進行している. 複合プラズマ源の製作では,設計時点で問題が発生し,当初計画に比べて遅れが生じたが,設計を完了し(プラズマ・核融合学会で発表),製作を進めている.ほぼ当初想定通りの仕様であるが,イオンビームおよびプラズマの引出し部の真空度がやや低いと予想さ れる.動作実験では,信号の大きさに対する対応が必要になる可能性がある. イオン-イオン分離の課題については,イオンの軌道計算と既設の模擬実験装置での疑似的な実験とによって,次年度の装置改造のための準備を行った(電気関係学会関西連合大会で発表).イオンの軌道計算では,想定していた電極構成で,期待するイオン-イオン分離が実現する.しかし,計算条件に似せた疑似実験では,期待される信号が得られなかった.差の原因として,空間電荷の影響などが予想され,低密度での実験や,動作条件を高いエネルギー領域に移すことを検討している. 進行波型変換器については,統合化によって長距離の輸送が必要となるイオンビームの径方向散乱の問題を実験的に調べた(電気関係学会関西連合大会で発表).現在の模擬実験装置では,ビーム収束電界を適切に調整することで,効率的な輸送を実現している.しかし,進行波型変換器の本質の一つであるビームの変調により,局所的に高密度(集群)領域が発生し,イオンの径方向散乱が起こる.この現象を定量的に評価し,空間電荷効果を導入した過去の数値計算と,現象の発生条件が矛盾しないことを確認した.収束電界の再調整により問題の軽減が期待できるが,改造後の装置では,収束電界用電極の位置が遠くなり,調整が困難となる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複合プラズマ源の製作に関して,精密設計を進めることにより,事前見積では検討が十分でなかった問題の解決に時間を要した点が遅延の大きな原因である. 事前の想定サイズでは真空排気速度が不十分で,特に高速イオンの引き出しに問題が生じると予想された.単純なサイズ拡張は,周辺配管や磁場コイルサイズにも影響し,ひいては研究予算を圧迫する.予算を含めて,全ての機材を合理的に選定・設計することに予想外の時間を要したため,研究計画が遅れることとなった. 複合プラズマ源は本計画の要である.この装置自体が本研究の独創性の大きなウエイトを占め,その製作には最大限注力し,慎重に進める必要がある。そのため,今年度の遅れはやむを得ないものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は,複合プラズマ源についての計画は遅延したが,イオン-イオン分離についてのイオンの軌道計算と疑似実験,および進行波型変換器でのイオンビームの径方向散乱を調べた.これらを引き続き行い,それらの知見を反映して統合型装置への改造を実施する. まず,複合プラズマ源の動作を調べる.二つのプラズマ生成領域のガス流量・静磁場・高周波電力を制御条件として,プラズマ源から流出するイオンおよび電子の密度とエネルギー分布およびイオン源の引き出し電圧に対するビーム電流の依存性を調べる. イオンビームの散乱については,既設装置での収束電界によるビームの制御性を定量的に把握する.この結果を利用して,複合プラズマ源のイオン源について,イオンビームの適切な制御法を検討する.必要に応じて,イオンビームの軌道計算を行う. イオン-イオン分離疑似実験については,可能な範囲で反射電界源の電極構造を変化させ,分離に有効な電界構造を実験的に調べる.また,装置の性能の範囲内で,プラズマの低密度化および高エネルギー化も行い,イオンの軌道計算との合致を目指す. 既設の汎用装置に,拡張真空容器および複合プラズマ源を合わせて統合型模擬実験装置を構築する.また,内部電極と進行波型変換器を設置し,初期実験を行う.
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