研究課題/領域番号 |
16H04320
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
和田 圭二 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00326018)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | PWMインバータ / GaNパワーデバイス / 電流制御 |
研究実績の概要 |
本年度は,GaNパワーデバイスを用いた 1MHzスイッチング可能なPWMインバータの試作・評価と電流センサ内蔵型インバータ回路の設計・製作を行いその制御性能について評価検討を行った。 GaNFETを用いて1 MHz スイッチングのPWM動作試験においては,高速スイッチング可能なゲートドライバ選定およびインバータ回路とゲート駆動回路周辺の回路実装手法に関する検討を行った。また,パワーデバイスのモジュール構成とヒートシンク接続手法について検討を行った。その結果,モジュール電位が等しくなる接続手法を新たに考案し,冷却とノイズの両方において優位な実装手法の提案を行った。この手法を用いて,インバータ回路を設計製作し,直流電圧 300 V, 出力電流 5 A とし,590 VA 動作が可能であることを確認した。 次に,インバータ出力電流フィードバック手法について検討を行った。具体的には,インバータ動作とサンプリング手法について検討を行い,ある一つのパワーデバイスのパルス電流のみを検出することで出力電流の制御が可能であることを示した。さらに,力率が異なる場合のサンプリング手法についても検討を行った。また,単相インバータを用いて本研究で提案するサンプリング手法の妥当性を実験により明らかにした。しかしながら,パルス電流をサンプリングするため,電流センサの挿入位置により電流サンプリング時にスイッチングのノイズによる影響を受けるおそれがあることを実験により示した。そこで,単相インバータで使用される4つのパワーデバイスのうち,2つの電流をサンプリングし電流制御することが安定動作を得るために必要であることを実験により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,1MHzスイッチングを実装するための手法と高速電流制御の2点についてこれまでに検討を行った。 PWMインバータ回路実装では,ゲート駆動回路配線とインバータ回路配線実装方法により,スイッチング速度および損失が大きく異なることを明らかにした。特に,GaNパワーデバイスを用いた10V/ns以上の高速スイッチング回路においては,その影響が顕著に表れることを実験により明らかにした。さらに,スイッチング時に発生する高周波振動であるいわゆるノイズについても実装手法により変化することが明らかとなった。高周波インバータで課題となるパワーデバイスの放熱についても新たに検討を行い,パワーデバイスの電位に着目したヒートシンク接続手法について検討を行い,1MHzスイッチングインバータに適した手法を考案した。これらの結果を反映したインバータ回路の設計・製作および評価を実証した。 次に,インバータのデジタル電流制御手法について検討を行った。本研究課題のインバータでは,高速のデジタル電流制御技術が要求される。そこで,各パワーデバイスに流れる電流を検出し,高速演算が可能なFPGAを用いた制御回路を実現することによって,遅延が少なく安定した動作が可能であることを明らかにした。また,この手法特有の回路力率によって異なる電流のサンプリング手法についても検討した。さらに,理想状態だけでなく実際の回路実装を想定したノイズ等の影響を考慮して実用的なサンプリング手法についても提案を行い,その有用性を実証した。 以上のことから,各研究項目についてはおおむね順調通り進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,非接触給電システムへの適用を目的とした高周波 PWM インバータ回路の実現とその動作に向けた検討を行う。まず,非接触給電システムの走行中給電を想定した場合の回路動作の課題として,インバータの電流制御系の高速化がある。まず,本研究で考案した電流センサ内臓インバータ回路の動作検証および詳細な解析を行う。この方式は,パワーデバイスの中に内蔵された電流センサを制御に活用する方法であり,回路の小型化と従来手法と同等の制御性能を達成することができる点に特長がある。本年度は,これまでの研究成果をさらに発展させて,電流検出器の接続位置の違いによる制御手法について確立し,さらにその妥当性を実験により評価を行う。また,この方式ではパルス電流を検出することが要求されるために,電流振幅が小さい区間では検出が難しくなる課題がある。この課題を解決するために,電流センサ実装手法とデジタル制御装置を活用した補正手法について検討を行う。次に,高速スイッチングを行うためにパワーデバイス周辺の回路実装方式と寄生パラメータの違いについて詳細に検討を行い,必要な回路実装技術を明らかにする。さらに,その成果から具体的な回路実装を行い,GaNパワーデバイスの特性を最大限に活かすための回路実装技術の妥当性を実験により明らかにする。また,回路シミュレーションと電磁界解析の技術を活用して,配線構造に着目した最適スイッチング波形に関する検証を行う。以上の,電流制御技術と回路実装技術について確立し, これらの技術を統合して1 MHz スイッチングの PWM インバータ回路の設計・製作および実証評価を行う。最後に,走行中給電システムへのPWMインバータの適用可能性を示す。
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