研究課題/領域番号 |
16H04321
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
野村 新一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (90401520)
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研究分担者 |
谷貝 剛 上智大学, 理工学部, 准教授 (60361127)
中村 武恒 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30303861)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高温超電導線材 / 超電導コイル / 機械的ひずみ / 臨界電流特性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,「イットリウム系(Y系)高磁場高温超電導線材のコイル化技術の工学的理論を確立する」ことを研究目的とする。本研究では実際のコイル形状とその製作技術を想定して短尺試料試験を行い,超電導コイルレベルでの機械的ひずみの許容値を決定する評価手法を確立し,その妥当性について実験コイルを開発して実証する。平成28年度の研究状況は下記の通りである。 短尺試料試験では,Y系テープ線材に引張を印加したり,捩れを印加したり,張力一定制御しながら治具に沿って曲げひずみを2方向から同時に印加することができる複合曲げ特性試験装置を用いて,Y系線材の機械的ひずみに対する臨界電流値を測定した。その結果,テープ線材の厚み方向曲げ+幅方向曲げ+張力を同時に印加した状態で0.8%程度のひずみが印加された場合,臨界電流特性が劣化することが確認され,0.8%以上の最大せん断ひずみ,0.45%以上の最大主ひずみが臨界電流値を低下させる目安となることがわかった。 一方,複合的なひずみに対する短尺試料試験の臨界電流特性とコイル製作過程で印加される複合的なひずみによる臨界電流特性との関係性を示すために,Y系線材に印加する巻線張力をロードセルで計測しながら1ターンコイルを巻く試験装置を設計製作した。常温中で実際にY系線材を厚み方向に曲げて巻線張力を計測しながら1ターンコイルを製作することに成功している。現在,平成29年度に実施予定の無冷媒超電導マグネットを用いた電磁力印加通電試験に向けて,実験準備を進めている状況にある。また,複合的なひずみが最も複雑に印加される場合としてヘリカルコイルを高温超電導テープ線材を用いて製作し,巻線機を用いた1ターンコイルを製作し,液体窒素冷却での通電試験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Y系線材を用いた短尺試料試験では,機械的なひずみに対する臨界電流特性の劣化の目安について定量的に示すことができている。この目安は最大せん断ひずみ,最大主ひずみを示したものであるが,詳細なひずみ分布を分析する必要はあるものの,短尺試料試験レベルで劣化の目安が明らかになったことで,超電導コイルを製作する上での許容値を検討する上での指標を示せたことになる。コイル製作過程でY系線材に印加される複合的なひずみを評価するために,巻線機を独自に開発し,Y系線材を厚み方向に曲げて巻線張力を計測しながら1ターンコイルを製作することに成功している。Y系線材を幅方向にも曲げながら巻線できるよう改良は必要であるものの,短尺試料試験とコイル製作過程での臨界電流特性との関係性を明確にするという研究目的に向けて,研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,機械的ひずみと外部磁場が印加された状態下でのY系線材短尺試料の臨界電流特性評価および1ターンコイルの電磁力発生時の臨界電流特性試験を計画している。上記の研究結果から機械的なひずみと臨界電流特性に関する超電導コイルのスケーリング則がどのように構築できるのか明らかにすることが重要な課題となる。引き続き研究代表者と研究分担者との協力体制を整えながら,Y系線材の機械的ひずみに対するデータベースを作成し,コイル形状に応じた機械的ひずみの許容値の評価法をより明確にしていきたいと考えている。
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