研究課題/領域番号 |
16H04322
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
飛世 正博 東北大学, 工学研究科, 産学官連携研究員 (30766762)
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研究分担者 |
佐久間 昭正 東北大学, 工学研究科, 教授 (30361124)
齊藤 伸 東北大学, 工学研究科, 教授 (50344700)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 磁気異方性 / 磁化 / 窒化 / 炭化 / マルテンサイト / 鉄 |
研究実績の概要 |
電力の過半を消費しているモーターの省エネは、我が国のエネルギー戦略において最重要課題の一つであり、そのモーターの効率を向上させるため、磁性材料の高性能化が求められている。現在、モーターの鉄心には軟磁性材料である電磁鋼板(Fe-Si合金)が使用されている。電磁鋼板はコストと性能の両面において優れた材料であるが、周波数が高くなると特性が低下し鉄損が増加してしまう。今後モーターは高周波化が進むと予想され、それに対応可能な優れた磁気特性を有する新規軟磁性材料が求められている。本研究は、高飽和磁化材料α”-Fe16N2ナノ粒子の合成技術をベースに、磁気特性の理論計算結果を踏まえてFe16C2およびFe16O2ならびにCあるいはOを希薄に含むFe100-yXy (X=C,O:y<11 at%) 合金の合成法を確立し、飽和磁化および磁気異方性の変化を明らかにし、最終的にはFe-(C,O) 合金によってユビキタス元素による高磁化軟磁性材料の実現を目指したものである。 平成28年度は、まず200 ℃以下の低温においてFe格子間にCを希薄に侵入させることが可能な浸炭条件を見出すために、CO等のC含有ガスにH2やN2等のガスと混合させてカーボンポテンシャル(平衡炭素濃度)、反応温度、時間等を種々かえて検討した。格子間に導入するためには反応温度をなるべく低くしFe3Cの生成を抑制することが必要であるが、あまり低いと反応そのものが起こらないためカーボンポテンシャルを高くした。その結果、非常に限られた条件下においてのみCを0.1wt%程度まで侵入させることが可能なことを見出した。従来、C導入は600 ℃程度の温度でガス浸炭させるか、約1200 ℃から急冷しマルテンサイト変態を利用する方法によっていたが、新たに200℃以下の低温でCをFeに導入できる方法を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平衡状態図に示されているようにα-Feは0.02 wt%までしかCを固溶しないので、従来200℃以下の低温でFeにCを導入することはできないと考えられてきた。本研究により約0.1 wt%ではあるがCを低温でFeの格子間に導入できたことは一つの大きなブレークスルーであった。この条件を見出すために多くのガス反応条件を試すことに時間を費やしたため、計画していたC濃度の制御あるいはCを規則配列させる反応条件の確立までは至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
低温でCをFeの格子間に導入可能な条件を見出したので、この周辺条件を詳細に検討しC濃度の制御あるいはCを規則配列させるガス反応条件の確立を行う。次にこれらFe-Cナノ磁性粉の磁気特性を評価し、C濃度、規則度との関係を明らかにする。同時にCの低温導入よりもさらにハードルが高いと考えられるOを希薄にFe格子間に導入する実験も挑戦を開始する。
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