研究実績の概要 |
Auナノ粒子をエポキシ樹脂に混合することによって金属が凝集してマクロ相分離を引き起こしたが、この結果は、SnやInなどの他の金属のナノ粒子とも一致した。そのため、金属ナノ粒子の表面を化学修飾することを試みた。Auナノ粒子の表面を分子量5,000、あるいは15,000のポリメチルメタクリレート(PMMA)オリゴマー、あるいは低分子量体で修飾した。その結果、前者Au-PMMAS-5Kでは、収率66-82%で目的の構造が得られ、金、水素、窒素、酸素濃度はそれぞれ38%, 5%, 37%, 0%であった。一方、後者Au-PMMAS-15Kでは、収率49-84%で目的の構造が得られ、金、水素、窒素、酸素濃度はそれぞれ7-20%, 7%, 50%, 0%であった。後者で収率のバラツキが大きかった原因は、反応系のスケールに依存し、スケールを上げると収率が低下し、Au表面のPMMA被覆率が上がる傾向にある。分子量の大きいPMMAを被覆させたAu-PMMAS-15Kの方がAuの含量が少ない結果はPMMAの分子量の増大が影響しているとも考えられるが、約20倍の比重を有するAuの重量比がこのレベルまで検出できることは、後者でも相当数のPMMAがAuの周囲を被覆していると考えられる。得られたAu-PMMAの粒径は2-5nm程度であることがTEMの観察結果から分かった。TG-DTAの結果より、200℃近辺で熱分解が開始し、300℃ではおよそ10%、400℃ではおよそ60%の重量減少が起こることが判明した。このAu-PMMAをエポキシ樹脂とアクリル系樹脂に混合してコンポジット化し、Tg以上の温度で加熱ことによってAuナノワイヤの形成を確認できた。二端子測定であるためプローブの接触抵抗は高いが、電流‐電圧特性にリニアな関係が見られ、導体として機能することまで確認できた。
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