近年、あらゆるものがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)関連技術への関心が高まっており、これらを無給電・メンテナンスフリー、かつ無線で情報発信できる自立型のワイヤレスセンサーネットワークへ展開していくために、クリーンな環境エネルギーから電源供給を行なう発電デバイスの開発が注目されている。 本研究では、比較的高いエネルギー密度で昼夜問わず発生している低周波振動を用いた発電デバイスを実現するため、低周波振動を効率よく電気エネルギーに変換できる特殊形状を有する3次元構造単結晶の作製技術を構築し、その材料や結晶形状、育成方位、電極配置等を最適化し、より低周波で高効率・小型の発電デバイスを開発することを目的とする。 初年度となる平成28年度は、特殊形状としてスプリング形状の場合を取り上げ、単結晶発電素子として最適な圧電材料、結晶方位を探索するために、既存圧電材料定数を用いて有限要素解析によるスプリング振動と発電量の結晶方位依存性を検討した。既存圧電材料の一つである三方晶、点群32に属するCTGS単結晶の定数を用いた解析で、断面が円形のスプリング構造を有する圧電体振動に対する発電量について結晶方位依存性および各定数寄与度を調べた。結果として、Z軸方向がスプリングの巻き軸に平行になる方位で発電量が最大となること、および定数の中で特に圧電定数e14が発電量の増加への寄与が大きいことを明らかにした。 また、単結晶3次元形状制御が可能な結晶育成機構を実現するために、独自結晶育成技術であるマイクロ引き下げ装置に回転軸とX/Yステージの移動機構を導入し、さらにその制御ソフトを構築した。構築した装置・制御ソフトの動作実証として、比較的作製が容易なサファイア単結晶を取り上げてスプリング状結晶の作製を試み、その作製に成功した。
|