研究課題/領域番号 |
16H04325
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
小峰 啓史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90361287)
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研究分担者 |
青野 友祐 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (20322662)
原 嘉昭 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (30331979)
長谷川 靖洋 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60334158)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ラシュバ効果 / 電界制御 / 磁壁移動 / ナノワイヤ |
研究実績の概要 |
本研究では重要な役割を果たすビスマス薄膜の成膜条件の精査を行い,高品質なビスマス薄膜と絶縁層の積層膜を形成し,その輸送現象を調べた.基板温度や熱処理温度を変えてビスマス薄膜を作製し,単結晶ビスマスと同等の輸送特性を得る条件を探索し,輸送特性の温度依存性および磁場依存性を詳細に調べた.これらと並行して,磁性薄膜の作製検討を行い,磁壁移動を検討するための垂直磁気異方性膜を形成した.現在,積層構造による輸送特性評価に移行しつつある. ディラック分散をもつビスマスの表面状態について検討し,ビスマス薄膜構造の電子状態を計算した.また,ビスマスの新たなタイト・バインディング模型について数値計算を行った.ビスマス薄膜の膜厚を変化させて,スピン分解された状態密度,ラシュバ分裂した表面エネルギーバンド構造,表面スピン分極の向きなどについて計算を行い,ARPESの実験結果との比較した.さらに、表面ポテンシャル勾配を考慮したタイトバインディング模型を用いて,膜厚を変化させたときのスピン分解状態密度などを計算し,実験との比較を行った. ビスマスナノワイヤの格子圧縮と輸送現象の関係についても言及し,バルクビスマスで従来から提唱されてきたタイトバインディング模型をもとにして,原子間間隔距離に依存した行列要素を考えることで歪みの効果を取りいれた有効モデルを用いた.格子定数を変えて,有効質量やL点電子バンド,T点ホールバンドの相対位置を系統的に調べた.さらに,得られたバンドパラメータを元にして有効質量方程式を解くことで,T点とL点のバンド端とナノワイヤとの関係を求めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたビスマス層,絶縁層,磁性層の成膜条件等を確立し,輸送特性を評価する準備が整いつつある.また,ビスマスにおけるラシュバ効果についても表面/界面における電子状態および輸送現象の理解が進んでいる.電界効果素子の形成に取り組んでおり,概ね計画通り研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度までに,本研究が対象とする材料,素子形成および評価システムに関する基本検討が完了したため,具体的な素子の評価を行いながら,界面におけるラシュバ効果の可能性について理解を進め,材料作製方法へのフィードバックを図る.並行して,表面/界面における電子状態模型,輸送特性の理論モデルを構築しつつ,大きなラシュバ効果を得るための素子構造について考察を進める予定である.
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