研究課題/領域番号 |
16H04326
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
矢野 裕司 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40335485)
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研究分担者 |
岩室 憲幸 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50581203)
岡本 大 筑波大学, 数理物質系, 助教 (50612181)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / パワーデバイス / MOS界面 / 超接合 |
研究実績の概要 |
本研究では、大容量の相補型電力変換器の実現に必要となる高耐圧・低損失p型SiC超接合(SJ)MOSFETの基盤技術開発を目的としている。特に、p型チャネルの特性向上とSJ構造導入によるドリフト層の低抵抗化を対象とし、以下の研究に取り組んだ。 1.p型MOS界面の詳細評価:SiC上に熱酸化膜を形成後、窒化処理時間を変えたMOSキャパシタの容量-電圧特性を測定したところ、処理時間に依らず、反転層の形成を示す特性が見られた。ゲート電極外周部にp+ガードリング構造を形成すると、このような反転特性が見られないことから、SiO2/SiC界面のSiC表面に窒素がドーピングされ、窒素ドナーから供給された電子がゲート電極下に集まることで反転層が形成されることが分かった。試作した横型MOSFETの電界効果移動度は0.1cm2/Vs程度と非常に小さく、コンタクト抵抗が大きいことが課題である。蓄積容量・コンダクタンスの周波数依存性から界面近傍酸化膜欠陥(NIT)の密度の空間分布を解析する手法を確立した。 2.p型SJ構造の最適設計:不純物濃度・ピラー幅・ピラー深さをパラメータとし、SJ構造のオン抵抗および耐圧のシミュレーションを行った。1300Vの耐圧でオン抵抗RonA=6.0mΩcm2が得られ、これは従来構造の理論限界の41%減である。また、ピラー幅を1um以下と狭くしすぎると、ピラー側面のpn接合部の空乏層により電流経路が狭くなり、オン抵抗が上昇してしまうことも明らかとなった。PチャネルSJ-MOSFETの電流電圧特性をシミュレーションしたところ、オン抵抗はRonA=65mΩcm2であり、同一構造のnチャネルSJ-MOSFETと比べて10倍大きかった。SJ部以外にもチャネル抵抗やp型基板抵抗の成分が大きいためであることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは窒化法により形成したp型MOS界面の評価を様々な手法で評価を行った。キャパシタを用いた界面特性評価に注力したことで、従来報告されていなかった現象(キャパシタの反転現象)の発見や新規トラップ分布の解析手法の開発ができたことは大きな進展である。p型SJ構造の最適化についても、広範囲な設計パラメータによるシミュレーションにより、ほぼ最適値を求めることができた。以上のように、おおむね当初の計画通りに研究を遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、p型MOS界面特性の評価と改善を行うため、窒化以外の手法にも取り組む。高いコンタクト抵抗の原因はコンタクトメタルにあることが分かっているので、それを改善したpチャネルMOSFETを作製し、正確なチャネル移動度の評価を行うとともに、種々の評価手法により界面欠陥のふるまいを明らかにする。また、キャパシタ、トランジスタともに特性の安定性に着目した研究に取り組む。 シミュレーションで明らかにした最適なp型SJ構造を実際に作製するためのプロセス開発に取り組む。まずは高エネルギーイオン注入を活用して、600V級のSJ構造作製から開始する。具体的には、2um程度のn型ピラー構造を形成するためのイオン注入プロファイルの決定と、注入マスク形成および活性化アニールが挙げられる。
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