研究課題/領域番号 |
16H04327
|
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
近藤 英一 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (70304871)
|
研究分担者 |
Bernard Gelloz 名古屋大学, 工学研究科(国際), その他 (40343157)
金 蓮花 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40384656)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ポーラスシリコン / 超臨界流体 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは超臨界流体のもつ超浸透性を利用して、ポーラスシリコン(PS)層のナノ・マイクロ細孔にワイドギャップ半導体を充填し、複合化を行なって高発光効率デバイス 開発を目指すものである。 本年度はポーラスシリコン(PS)層にZnOを充填したナノコンポジット材料の作製の条件について検討を行った。フローチャンネル型の超臨界流体中反応装置を用いて、原料にZn (MOPD)(液体)を用いPS試料とともにCO2を供給して容器を熱し,さらにO2を添加し10~20MPa,150~250℃で10~60 分処理した。処理中の細孔内や試料表面への原料吸着・浸透を評価するため、SiO2、Si、ナノポーラスSiO2系薄膜を用いてin-situエリプソメトリを行った。In-situエリプソメトリではΔ、Ψの2つ偏光パラメータのスペクトルを取得した。ΔとΨは試料表面の屈折率などによって敏感に変化する。 加熱高圧容器を用いるため、昇温、昇圧下で窓が測定に及ぼす影響をまず調査した。次に、原料の希釈溶媒であるアセトンの影響を調査した。これらの影響に基づき補正を行って上記三種類の薄膜の処理を行ったところ、ナノポーラスSiO2膜の場合のみスペクトルの変化が見られ吸着を観測できることが分かった。つまり、細孔内に原料が吸着していた。スペクトル変化から特に80℃以上でこの吸着が起きたと判断できた。この条件下で、市販のトレンチ&ホールSiO2ないしSi微細構造をもつ試料上へ堆積を行ない充填に成功した。さらに、PS試料を用いて良好な充填を確認することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、H29年度(以降)にPS-ZnOコンポジットを作製することになっていた。本年度は実際に作成を行いPS細孔内へのZnO充填を確認でき、コンポジット作成に成功した。実用開発を意識したフローチャンネル型の装置を用いて堆積ができたことは当初計画通りである。充填特性を評価改善するための成膜原料の細孔内への吸着・浸透評価は前年度(H28年度)の主要課題であった。前年度は成膜プロセス開発に注力し、吸着評価はH29年度に行った。In-situエリプソメトリという表面を選択的に検出できる手法を適用、温度圧力や添加剤の影響を補正して、ごく微量の原料吸着とプロセスの対応を図ることができた。さらにはコンポジット作成条件の最適化へ適用できた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、PS 層にZnOを充填したナノコンポジット材料の作製を行うとともに、本年度は導電性電極を用いたデバイス作製とその評価を行う。 1.ZnOの埋め込み性向上を行う。前年度のエリプソメトリ吸着評価に基づき、埋め込み量が向上する温度、濃度、圧力条件を見出す。またp-Siの作製条件を変え、ZnO埋め込みにおよぼす伝導型や細孔径依存性を検討する。大径の場合にはコンフォーマル成膜でもよい。 2.本デバイスのZnOは電極として利用するので導電化を試みる。広く用いられているAlドープは超臨界CO2流体中堆積法では利用が困難であるので、文献でドーパントとして実績の報告がありかつ本法で利用が可能な、Cu、Ni、Feを試みる。それぞれの有機金属錯体とZnOプリカーサを混合し、各ドーパント仕込み量と膜伝導性、透明性を評価する。さらに、pSi埋め込みに適用する。 3.発光デバイスの作製は前年度に引き続き行いその方法は同じである。すなわち、まずPS裏面をAl電極等でメタライズし表面ZnO電極側(必要に応じAu電極形成)との間のnSi/ZnO構造のI-V 特性を評価する。発光有無と波長は光電子増倍管を用いた分光分析により確認する。今年度は埋め込み性、pSi伝導型、細孔径、pSi酸化の程度などとの対応を図る。電気的・光学的特性評価をフィードバックし、最適なプロセス方法を実現する
|