平成30年度は昨年度同様Co/Pt系遷移金属/貴金属積層膜の上部にHfO2絶縁層とAl電極を作製した電圧アシストスピンホール磁化反転素子を作製し,電圧印加による磁気特性の変化および電圧印加時のスピンホール磁化反転を調べた.まず,電界印加による磁気特性制御ではHfO2の成膜条件を調整することで,非常に大きな磁気異方性の電界効果が得られることが分かった.磁気異方性の見積もりには膜面内の磁化曲線を高磁場で測定する必要があるため,正確な値を見積もるには至っていないが,1000 fJ/Vmを超える大きな値が得られていると考えられる.一般的な電界効果は100 fJ/Vm程度であることから,本検討により非常に大きな電界効果が得られる成膜条件が明らかになった.次に電圧アシストスピンホール磁化反転について,Co(0.4 nm)/Pt(3 nm)の試料において,臨界反転電流密度の電界効果が4.3 %/Vm程度のものが得られた.同一素子の保磁力の電界効果は43 %/Vmであり,1桁差があることも分かった.保磁力と臨界電流密度の電界効果の差の原因は十分わかっておらず,より詳細な検討が必要であることがわかった.なお,臨界電流密度の電界効果は実際の応用を考えると不十分な値であり,今後より大きな電界効果を示す材料探索が必要であることが分かった.この観点において,上述の1000 %/Vm以上の電界効果を示す素子は一つの重要な候補と考えられ,今後も継続的に検討が必要であることがわかった.
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