前年度までに自発分極が面内方向(c軸方向)に存在するm面 GaN をレーザーテラヘルツ放射顕微鏡(LTEM)により観察し、c 軸と平行な自発分極により放射THz 波が増強されていることを確認し、また、m面GaN試料を回転させることにより、分極反転ドメインの特定にも成功している。本年度は、THzベクトルイメージングの手法を取り入れ、任意のベクトル量をもつm-GaN の表面の局所分極を可視化することに成功した。m面GaN 表面から放射されたTHz波を二つのワイヤーグリッド偏光子に通して、片方のワイヤーグリッドを90度回転させることにより、THz波の偏光のx成分とy成分の分布を取得する。この2つの偏光成分を合成しすることによりベクトルイメージングに成功した。これまでの一方向のみの分極を検出する手法では、分極反転ドメインの形状は観察することができたが、界面や内部の分極方向の詳細は不明であった。本手法により、ドメイン内部における分極の変化の様子がより鮮明にイメージングすることが可能となった。また、本手法により分極の表面に平行な成分と垂直成分を分離することに成功し、ドメイン界面では面に垂直な分極が増加することが明らかになった。 また、本年度はGaNに加えて、よりバンドギャップの大きい酸化ガリウム(β-Ga2O3)からのTHz波放射にも成功した。ドーピング濃度の異なる2種類のn型Ga2O3と絶縁性のGa2O3に3次高調波発生(THG)により波長245nmのレーザーで励起することにより、THz放射波形を計測した。その結果、n型と絶縁性のGa2O3では、放射ピークの位相が反転しており、フェルミ準位が大きく異なっていることを示唆している。このことはGa2O3においても、LTEMが表面ポテンシャル等の評価に有効であることを示唆している。
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