本研究では、光情報通信に利用可能な光周波数資源を大幅に拡大し、効率的に利用するためには未開拓の1.0~1.3μm帯で動作し、かつ入力光信号の偏波に依存しない半導体光アンプ(SOA)を開発している。縦/横偏波間の増幅率差の課題克服はSOA実用化のカギを握っており、独自のInAs/GaAs量子ドット多層積層によってTM利得を増強して偏波無依存を実現を目的にしている。これまでに、結晶成長温度の精密な制御に基づいて量子ドットの発光波長を1.0~1.3μmの範囲で制御することに成功し、量子ドットの多層積層によりTM偏光特性の増強を実現するとともに、量子ドット多層積層技術の構築、不純物ドープによる発光特性の制御、クラッド構造を有するデバイス構造の設計・試作・評価を行ってきた。平成30年度は光アンプデバイス構造を設計するとともに、実際にデバイスを作製し光アンプデバイス特性を精密に評価した。具体的には以下のとおりである。 〇AlGaAs クラッド層で積層量子ドット活性層挟み込んだp-i-n 構造からなるSOA 素子を設計、試作、評価した。 〇電流注入発光特性などSOA デバイスの動的な光応答基礎特性を精密に評価した。 〇光データ転送実験を実施するため、光ファイバーによる素子の応答測定評価システムとして定評のあるfiber-to-fiber評価システムを構築した。 〇fiber-to-fiber評価システムを用いてSOAデバイスの光増幅特性を詳しく評価した。 以上の結果より、本研究で開発してきた1.0~1.3μm 帯で動作するSOAデバイスが偏波無依存動作の指標とされる偏波利得差1dB 以下で動作することを実証することに成功した。
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