研究課題
縦型GaNデバイス実現のためには、界面制御技術の確立が重要な課題となっている。そこで本研究では、400度程度の低温処理として高圧水蒸気処理(High-Pressure-Water-Vapor-Annealing, HPWVA)に着目した。水の臨界点付近の気相においてはラジカル反応が主体的となり、熱分解、再結合、脱水縮合、脱炭酸等の各反応が進行する。本研究ではSiO2/n-GaN縦型MOS構造に対してHPWVAの効果を検討した。MOSキャパシタの作製にはn-GaNホモエピタキシャル層(4 μm)を有するGaN自立基板を用いた。初めにn-GaN上にTEOSおよびO2を用いたプラズマCVD法によりSiO2を300度で約100 nm堆積した。絶縁膜堆積後に熱処理としてのHPWVA(400度、0.5 MPa、30 min)を行った。次に、上部および裏面電極を形成した。最後にフォーミングガスアニールを行いAl/SiO2/n-GaN 縦型MOSキャパシタを作製した。また比較のため熱処理無し(as-depo.)試料およびO2 anneal試料も同様に作製した。MOSキャパシタの電流密度対電界強度特性を測定した。as-depo.試料の絶縁破壊電界は9.3 MV/cm、O2 anneal試料では9.9 MV/cmを示したのに対して、HPWVA試料では11.0 MV/cmが得られ、as-depo.試料と比較し約2 MV/ cm 向上した。電荷伝導機構解析の結果、as-depo.試料では酸素欠損によるTrap-assisted Tunnelingであったが、HPWVAを行うことで理想的なFowler-Nordheim Tunnelingとなった。このことからHPWVAにより膜中に酸素が拡散し、酸素欠損を補填することで再酸化され特性が改善したと考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究では超臨界水処理によるSiO2/n-GaN 縦型MOS構造に対する効果を検討するためにas-depo.、O2 anneal、高圧水蒸気処理を施したAl/SiO2/n-GaN 縦型MOSキャパシタを作製し、電気的特性評価を行った。電圧電流特性評価より、HPWVAは高い絶縁破壊電界およびリーク電流の抑制、またトラップ凖位の改善を実現した。また容量電圧特性から、HPWVAはSiO2/n-GaN界面における窒素空孔由来の欠陥準位を酸素で不活性化し、約一桁のDit減少に効果があることが明らかになった。さらの超臨界水処理の設計を行い、納品され、性能評価を行っている。
本年度は、超臨界水処理を縦型MOS構造に対して行い、その効果を確認する予定である。電流電圧特性や容量電圧特性から、その効果を検証し、さらに絶縁膜と半導体界面の電子物性を光電子分光特性評価から、明らかにし、その劣化モデルを立案する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件)
Applied Physics Lettes
巻: 108 ページ: 02501-1,02501-4
10.1063/1.4939861
J. Phys. D. Appl. Phys.
巻: 49 ページ: 035102,035109
10.1088/0022-3727/49/3/035102
Journal of Micromechanics and Microengineering
巻: 26 ページ: 075010,075018
10.1088/0960-1317/26/7/075010