研究課題/領域番号 |
16H04334
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
東 清一郎 広島大学, 先端物質科学研究科, 教授 (30363047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / シリコン / 結晶成長 |
研究実績の概要 |
本研究は、融液からの半導体結晶高速成長過程に関して、独自のその場観察手法に基づいた実験的アプローチにより粒内欠陥(intragrain defects)形成および面方位選択性発現メカニズムの解明と、それらの制御法を明らかにすることを目的としている。特にH28年度はこれまでよりも高速での結晶成長を実現するために、大気圧熱プラズマジェット(TPJ)の高パワー化に取組んだ。DCアーク放電における投入電流を増加させても放電電圧が殆ど変わらず効率的高パワー化ができないのに対して、Arガス流量を従来の2L/minから18L/minに増加させると放電電圧が12.9Vから26.5Vへと大幅に増加し、この結果最大投入電力4.6kWのハイパワーTPJの発生に成功した。ガス流量増大による電極冷却効果および熱ピンチ効果によるプラズマ集中がハイパワーTPJの発生の重要な要因であることが明らかになった。発生したハイパワーTPJを用いることで最大8000mm/sの超高速走査でアモルファスシリコン膜を溶融結晶化可能となった。この時3000mm/s以上の高速走査では、溶融シリコン領域の移動に伴って横方向に長距離結晶成長が生じる従来の成長様式(HSLC)に加えて、ハイパワーTPJ照射中心部に於いて粒状の結晶成長領域が生じることを見出した。これは従来より高い加熱・冷却速度でシリコン融液が形成された結果、過冷却状態の融液中での高密度核生成により生じた新たな結晶成長様式であると推測された。このモデルに基づき、アモルファスシリコン膜を一辺が3~50ミクロンの正方形孤立パターンに形成した後にハイパワーTPJ照射したところ、6ミクロン以下のパターンに於いて核発生を1回に制御できることが明らかになり、3ミクロンのパターンではほぼすべてが単一核からの結晶成長とすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は超高速結晶成長に重点を置くことでこれまでにない新たな結晶成長様式を見出した。これは極めて高い加熱・冷却速度でシリコン融液を形成した結果、過冷却状態の融液中での高密度核生成により生じた新たな結晶成長様式であることを明らかにした。この知見に基づき、アモルファスシリコン膜を一辺が3~50ミクロンの正方形孤立パターンに形成した後にハイパワーTPJ照射したところ、6ミクロン以下のパターンに於いて核発生を1回に制御できることが明らかになり、3ミクロンのパターンではほぼすべてが単一核からの結晶成長とすることができた。以上のことから、当初予想していなかった新たな結晶成長を見出し、更にこれを実用上重要な単結晶化へと結び付ける道筋が明らかになったことから、現在のところ研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでに蓄積した高速結晶成長の知見を基に、フレキシブルガラス基板上での結晶成長に取組む。フレキシブルガラスであれば円筒型ドラムに貼り付けて回転させながらハイパワーTPJ照射することが可能である。8000mm/s以上の超高速走査で結晶成長を達成するには従来の一軸走査型のリニアステージでは機械的に限界があるため、回転ステージを新たに設計・製作し、これを用いた結晶成長の実験を推進する。実験設備を整備した後、更なる高速走査実験ならびに核発生制御に有効なアモルファスシリコンパターンの考案をおこなう。将来的には、成長制御したシリコン結晶を用いてトランジスタ動作、更にはトランジスタを集積化して回路動作を目指す。
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