研究課題
光ポンピングによりAlGaN量子井戸構造からの深紫外誘導放出の測定を行った。測定に用いた試料は、c面サファイア基板上にAlNバッファ層、AlGaNクラッド層、AlGaN光閉じ込め層を介して成長されたAl0.45Ga0.55N/Al0.55Ga0.45N量子井戸構造である。井戸層の膜厚は2nm、障壁層の膜厚は8nmである。この試料の基本特性として内部量子効率を測定したところ、室温で53%、750Kで16%であり、UV-C帯では比較的高い値を示した。ステルスダイシング法により共振器ミラーを作製し、試料表面から光励起し、試料端面から誘導放出光を測定した。励起光源には、エキシマレーザ励起色素レーザの第2高調波(励起波長240nm)を用いた。その結果、10Kでは276.9nm、室温では274.3nmに誘導放出光が観測された。誘導放出に対するしきい励起パワー密度は、10Kでは12.7kW/cm2、室温では68.6kW/cm2であった。一方、誘導放出光のピーク波長は、10Kから200Kまでの温度領域ではほとんど変化せず、276.9nm付近に位置していたが、250Kでは271.9nmに観測され、急激な短波長シフトを示した。誘導放出に対するしきい励起パワー密度を励起キャリア密度に換算すると、10Kで1.5×1018cm-3、室温で8.3×1018cm-3となる。励起子モット転移密度を計算すると3×1018cm-3となることから、誘導放出光のピークシフトと併せて考察すると、10Kから200K付近までは励起子系の輻射再結合過程による誘導放出が観測されており、250K以上では電子-正孔プラズマによる誘導放出へ変化しているものと考えられる。この測定結果は、AlGaN系量子井戸構造の誘導放出機構に励起子が関与していることを示す初めての実験結果であると考えられる。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 57 ページ: 060311~060311
DOI: 10.7567/JJAP.57.060311
Journal of Applied Physics
巻: 123 ページ: 205705~205705
DOI: 10.1063/1.5023996