研究実績の概要 |
本研究では,希少元素In や毒性元素Se を含まない4元系材料Cu2(Sn,Ge)S3に着目した。Cu2(Sn,Ge)S3薄膜の作製技術の確立とともに最適なデバイス作製技術を検討し,Inフリー化合物を用いた高効率薄膜太陽電池の実現を目指して,以下の取り組みを行った。 1.Cu2(Sn,Ge)S3薄膜の作製技術の確立 Cu,Sn,Ge,Sの同時蒸着装置を用いて,様々なGe組成を持ったCu2(Sn,Ge)S3薄膜の製膜条件の検討を行った。基板温度300度,硫黄セル温度150度(クラッキング温度800度)下で,Cuセル温度1050~1100度,Snセル温度920~985度,Geセル温度1110~1215度において,組成比Cu/(Sn+Ge)=0.96~2.73,Ge/(Sn+Ge)=0.14~0.67のCu2(Sn,Ge)S3系薄膜が得られ,セル温度の制御によるGe/(Sn+Ge)組成比の制御条件を明らかにした。 2.Na添加による太陽電池の高効率化 Naフリーガラス基板(EAGLE XG)を用いて,Na添加の影響について調査した。Cu2SnS3同時蒸着膜にNaFを積層し,熱処理をすることによって結晶成長を行い,得られたCu2SnS3薄膜を用いて Glass/Mo/Cu2SnS3/CdS/ZnO:Al/Al構造の太陽電池を作製し,光起電力特性を評価した。Na添加しなかった試料と比較して,僅かにNa添加した試料は,結晶粒径が著しく増大し,光起電力特性が向上するが,Naの過剰な添加は異相を生じ,光起電力特性が低下するため,添加量の最適値があることを明らかにした。また,Cu2GeS3薄膜においてもCu2SnS3系と同様にNa添加しなかった試料と比較して,Na添加した試料において光電変換特性が向上することを見出した。
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