研究課題/領域番号 |
16H04341
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末光 哲也 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90447186)
|
研究分担者 |
松岡 隆志 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40393730)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 窒化物半導体 / 電界効果トランジスタ / 窒素極性 / 高電子移動度トランジスタ |
研究実績の概要 |
研究の2年度目にあたる平成29年度は、まず窒素極性GaNチャネル逆HEMTのデバイス特性の向上を検討し、既存報告との差別化を明確にした。これまでの窒素極性材料は、結晶表面にヒロックが発生することを抑えるために、c軸から大きなオフ角を付けて切り出した基板を利用していた。一方で、オフ角が大きいと結晶にステップバンチングが高密度に発生し、その結果として、結晶表面における電気伝導特性に異方性が生じる。これは、HEMTを作製したときに、そのゲートの向きによってトランジスタ特性が変化する現象を生む。本研究によって、我々は基板オフ角が0.8度と従来報告の1/3以下にまで減少させてもヒロックの発生を抑え、更にステップバンチング密度も小さい高品質な窒素極性逆HEMTエピタキシャル結晶を成長することに成功した。この結晶でHEMTを作製して、従来報告されたいたような、電気伝導の異方性が全くないことを、トランジスタ特性の評価によって確認した。 一方、InGaNチャネル導入の検討を開始した。これまでGa極性のHEMTにおける報告では、InGaNを導入すると移動度が低下する問題があった。窒素極性では、チャネルとなるInGaN層が最表面に配置されるため、Ga極性での成長のようにInGaN成長の後に高温成長の必要なAlGaNを成長してInGaN層が劣化する懸念がなくなる。このため、高移動度のInGaNチャネルが実現出来ることを期待しているが、現状ではGa極性と同様に移動度の低下が発生している。今後は、移動度低下の原因を追求し、InGaN層の成長条件を検討することによって、GaNチャネルを上回る移動度を実現することを目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒素極性GaN/AlGaN/GaN構造の逆HEMTにおいて、従来技術に比して基板オフ角を大幅に低減することによってチャネル内電気伝導特性の異方性の発生を防ぎ、ゲートのレイアウト向きに関係なく均一なトランジスタ特性を実現して論文化した。
|
今後の研究の推進方策 |
窒素極性GaN/AlGaN/GaN逆HEMTについて、オーミック電極のコンタクト抵抗の低減、ゲート絶縁膜の堆積条件の最適化、エピタキシャル構造の改良等によって、トランジスタ特性の向上を目指す。 また、InGaNの成長条件とエピタキシャル構造の設計(InGaN/GaNコンポジットチャネル構造等)の両面から検討し、InGaNチャネルの導入によって電子移動度の向上を実現することを目指す。
|