研究課題/領域番号 |
16H04345
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三田 吉郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40323472)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MEMS / 精密部品加工 / 先端機能デバイス / 知能ロボティクス / 電子デバイス・機器 |
研究実績の概要 |
本研究ではMEMS界での常識である「機械的MEMSは水中では使えない」という限界を、提案者が得意とする深掘り微細加工技術と、同じく深掘り技術のエキスパートとしてシリコン深掘り加工業界を指導する中で技術シーズへのアクセス権を得た「蒸着重合による三次元形状へのコンフォーマル成膜技術」とを融合した、新しいデバイス構造とその製造プロセスを開発することによって打ち破り、「水中において機械的に動作するMEMS」という、極めて挑戦的かつ広い範囲での応用が期待できる、MEMSの新たなフロンティアを開拓するための学術基盤を構築することを目的とする。 研究1年目は、5つのサブタスクのうち基礎研究の「D2」ならびに、出口研究である「D5」について進捗が得られた。 ・D2: 水中における変形や機械力を測定するセンシング機構 では、T2-1: 外力により構造内部で発生する応力を検出する機構の設計解析(ピエゾ抵抗式)に注目し、ポリシコン抵抗による変形検出を行なう基本特性抽出素子のための集積回路設計試作を行なった。 ・D5: 平面内で流体を循環させる単純な機構による、大規模集積回路(VLSI)の局所的な発熱を緩和する冷却システム(ホットスポット除去システム)では、T5-1: 水中で動作するアクチュエータを利用したポンプ機構の設計試作に着手した。 ・基盤技術として、新機能をもつ集積化電子素子を高い信頼性で試作する「ポストプロセス集積化MEMS試作手法」を考案し、いくつかの素子において実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目は、本研究が目指す、水中で動作するマイクロアクチュエータ・センシング機構の構成部品について重点的に研究を行ない、進捗が得られた。特に、少ない試作回数で安定的に素子の性能を得るためには、大規模集積回路(VLSI)基板はデザイン相乗り(マルチチップサービス)にて企業のファウンドリ工場で試作し、MEMS後加工は文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム拠点(東京大学)で行なう、「ポストプロセス集積化MEMS試作手法」が望ましいと考察した。実際にマルチチップ試作を行ない、後加工を施した集積回路が動作することを確認した。後加工集積回路手法を招待講演(国外、国内1件ずつ)で発表し、試作回路(自立素子への光エネルギー伝送手法)を各種会議で発表した。また、後加工処理がLSI構成素子、特にトランジスタの性能に与える影響を測定するテスト構造を考案した。
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今後の研究の推進方策 |
「ポストプロセス集積化MEMS試作」について、基本プロセスの高度化を行なうとともに、力覚検出素子などの構成素子の試作にとりかかる。特に、T2-1: 外力により構造内部で発生する応力を検出する機構の設計解析(ピエゾ抵抗式)や、マイクロアクチュエータの駆動に適したエネルギー伝送、エネルギー蓄積素子の設計試作を行ない、完成したものから実験を行なう。さらに、水中でT5-1: 水中で動作するアクチュエータを利用したポンプ機構の設計試作を行ない、実験を行なう。三次元構造上に絶縁膜や導電膜を形成する手法について検討ならびに実験を行なう。以上によって、研究2年目終了時点での構成要素の完成を目指す。
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