本年度はダイヤモンド半導体へのスピン注入の更なる高効率化に向けて、①高効率スピン注入の為のダイヤモンド/グラフェン接合の高品質化、②新規高効率スピン注入源としてのLaBiトポロジカル伝導材料の作製、③強磁性トンネル接合によるダイヤモンドへの高効率スピン注入、を行い以下の成果を得た。 ①に関して、化学気相成長(CVD)法によりダイヤモンド上に高品質垂直配向グラフェン(カーボンナノウォール:CNW)を作製する事に成功した。またダイヤモンド/CNW接合が光検出機能と不揮発記憶機能を併せ持つ新規光デバイスになる事を初めて見出し、その発現機構について検討した。また、ダイヤモンド上への高品質グラフェン(通常配向)作製技術として、酸化グラフェン水溶液をスピンコート後、CVD装置中でメタンを導入しながらアニールする新技術を開発した。これらの結果について、国内外学会で招待講演2件、論文1件(J. Mater. Res.)、国内学会で2件の発表を行ったが、1件の発表が学生賞を受賞した(応用物理学会支部学術講演会発表奨励賞)。②に関して、高効率スピン注入源として我々はトポロジカル伝導体であるLaBiに着目しているが、スピンデバイス化に必須となるLaBiの薄膜化(c軸配向薄膜作製)に初めて成功しトポロジカル伝導性に由来すると思われる弱反局在効果を初めて確認した。得られた結果に関して2件の国内学会発表を行った。③に関して、トンネルバリア(MgO)の品質向上及びダイヤモンド表面終端(水素終端)の更なる最適化を行った所、現在までには不可であった、非局所四端子測定による磁気抵抗効果(~4%@4K)の観測に初めて成功した。スピン注入効率が、CoFe磁性電極/MgO/ダイヤモンド界面の品質改善により格段に向上した為だと思われる(論文投稿等準備中)。
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