研究課題/領域番号 |
16H04350
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永妻 忠夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00452417)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 無線通信 / 大気減衰 |
研究実績の概要 |
近年、無線通信技術の高速化に対するニーズが高まる中、100GHz~300GHz帯を利用した「テラヘルツ無線」の研究開発が国内外で本格化している。本研究では、100GHz以上の超広帯域幅を利用できる可能性のある600GHz帯を、次なるテラヘルツ無線の学際的研究領域として位置づける。この周波数領域は、水蒸気による吸収減衰が顕著となり、周波数に大きく依存した大気減衰の影響を受けるため、大気減衰と伝送品質との関係を理論と実験の両面から分析した上で、600GHz帯に適した通信方式と、送受信デバイス・機器に求められる特性や性能を明らかにすることが必要である。今年度は、本目的を達成するための基盤技術の研究を行い、以下の成果を得た。 (1)変調・直接検波方式の600GHz帯(500GHz~800GHz)無線システムを開発し、0.5m~5.5mの伝送実験を行い、大気減衰特性を詳細に計測した。同帯域内に存在する3つの吸収ピークの周波数と減衰量において、理論値と極めて良く一致する結果が得られた。 (2)広帯域(高速)伝送のためには、上記の直接検波器では感度が20dB近く足らないことが判明したため、ミキサーを用いたヘテロダイン受信器の開発を行い、約50dBの感度向上に成功した。 (3)次年度に向けた準備として、(2)において開発した受信器を活用したコヒーレント無線システムを構築するため、逓倍方式(光技術を用いて100GHzまでの周波数可変RF信号の発生し、RF増幅器で増幅した後、逓倍器を使って6倍のキャリア周波数を発生させる手法)と、光コム方式(600GHz帯の光コム信号を発生し、そこから2波長を切り出し、フォトダイオードでRF信号に変換する手法)の設計を完了した。 (4)(3)における光コム方式に用いる、600GHz帯フォトダイオードならびに実装モジュールの設計を完了した。現在試作中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新たな周波数帯域への挑戦であることから、以下のような予想外の事態が2つ生じたが、適切な対応ができた。
(1)当初は、1m程度の伝送実験で大気減衰特性が得られると予想していたが、精度よく測定するためには、5mの距離が必要になることが判明し、ミラーを組みあわせたアンテナの高利得化により長尺化を図った。
(2)600GHz帯の直接検波器の感度が予想以上に低いことが判明したことから、ミキサーを用いたヘテロダイン受信器の開発を行い、次年度以降の研究に必要となる、大幅な感度向上(50dBの増加)に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、コヒーレント送信器の開発に注力し、当初の計画通り、シングルチャネルあたり、20Gbit/sを超える高速無線伝送を実現するとともに、多チャネル化に向けた研究を進める。
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