近年、無線通信技術の高速化に対するニーズが高まる中、100GHz~300GHz帯を利用した「テラヘルツ無線」の研究開発が国内外で本格化している。本研究では、100GHz以上の超広帯域幅を利用できる可能性のある600GHz帯を、次なるテラヘルツ無線の学際的研究領域として位置づけ、本年度、以下の成果を得た。
(1)平成28 年度で行った理論検討を基に、コヒーレント2波長光源として、差周波数が560GHz~710GHzにおいて、サイドモード抑圧比>35dB、580~690 GHzでは40~45dBの高品質の光信号源を開発した。また、より消光比の高い光フィルタを用いることにより、サイドモード抑圧比として、560GHz~710GHz において>45dBが得られること、光位相変調器を駆動する増幅器の帯域を、現在に31~ 38GHzからさらに広げることで、差周波数をさらに拡大することが可能であることを明らかにした。 (2)上記の差周波数を有する2波長の光信号を、直接、フォトダイオードに照射することで、差周波数に対応したテラヘルツ波を発生することができるが、従来の市販のフォトダイオードでは、十分な出力と帯域が得られないことが、平成28 年度の研究で明らかになったことから、600GHz帯の導波管出力型のフォトダイオードモジュールの設計と試作を行った。その結果、400GHz~900GHzで動作し、3dB帯域として世界最高となる340GHz、最高出力-19dBm (500GHz)のモジュールの開発に成功した。 (3)上記モジュールおよび光信号源からなる送信機と、平成28年度 に開発したヘテロダイン受信機を組み合わせ、600GHz帯の無線通信実験を行った。その結果、600GHz帯では世界最速となる10Gbit/sのエラーフリー伝送に成功した。
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